Stockmarkの日本語ビジネスLLMで中小企業の市場調査を週5時間短縮する使い方
「競合の動きを調べたいが、担当者が週の半日を検索とニュース読みに溶かしている」。この構造的なムダに効くのが、ストックマーク株式会社が公開する日本語特化の大規模言語モデル (LLM) です。モデル本体は MIT ライセンスで、商用利用まで含めて無料。中小企業でも今日から検証を始められます。
- ストックマークは国産の日本語特化 LLM を自社開発し、モデル本体を MIT ライセンスで無料公開している
- 主力の Stockmark-2-100B-Instruct は 960 億パラメータ、日本語 30% を含む約 2.0 兆トークンで学習
- 同社発表では自社作成の業務知識テストで正答率 90%、GPT-4o の 88% をわずかに上回った
- 中小企業の現実解は「NVIDIA の無料お試し枠で API から触る」か「13B の軽量モデルを社内 PC で動かす」の 2 ルート
- 法人向けサービス Aconnect は料金非公開 (要問い合わせ) だが、無料トライアルで実務検証が可能
海外製の生成 AI は日本語も達者ですが、「日本の業界紙に出てくる社名・製品名・専門用語」の解像度は別問題です。ストックマークはそこを正面から狙って自社でモデルを作り、しかも MIT ライセンスで手放しました。中小企業にとっての価値は「安い代替品」ではなく、機密を外に出さずに日本語の調査作業を任せられる選択肢が ¥0 で手に入ることです。ただし本記事で後述するとおり、動かす場所のコストと手間は残ります。そこを直視したうえで判断してください。— Mira / AI経営ラボ 編集長
こんな方に効きます
- 業界ニュース・競合の新製品情報を毎週まとめている中小企業の企画・営業担当
- 見積根拠や技術動向を調べる時間が読めず、提案書作成が後ろ倒しになっている経営者
- 顧客名や図面情報が絡むため、社外の生成 AI に資料を貼り付けられない製造業・士業
- 国産 AI を優先したいが、実際に何ができるのか判断材料が足りない事業主
該当する項目が 1 つでもあれば、次のセクションから読む価値があります。
Stockmark とは何をしている会社か
ストックマーク株式会社は、ビジネス情報の収集・分析を支援する国内の AI 企業です。特徴は、他社の基盤モデルを借りるのではなく、日本語と業務知識に特化した大規模言語モデル (LLM) を自社でゼロから開発している点にあります。
同社は 2025 年 3 月 18 日に「Stockmark-2-100B-Instruct-beta」を公開し、その後に正式版へ更新しました (公式ニュース)。モデルは Hugging Face 上で誰でもダウンロードでき、ライセンスは MIT です。
MIT ライセンスは、著作権表示を残せば商用利用・改変・再配布が広く認められる形式です。つまり中小企業が自社業務に組み込んでも、追加のライセンス料は発生しません。
公開されている主なモデル
| モデル名 | 規模 | 位置づけ | 中小企業での現実性 |
|---|---|---|---|
| Stockmark-2-100B-Instruct | 960 億パラメータ | 日本語ビジネス用途の主力 | △ 自社運用は GPU 要件が重い。API 経由なら可 |
| stockmark-13b-instruct | 130 億パラメータ | 軽量・指示追従版 | ◎ 高性能 PC やクラウド GPU で動かせる |
| Stockmark-2-VL-100B-beta | 960 億パラメータ | 画像・文書も読む試験版 | △ 検証段階。試すなら情報システム担当と一緒に |
| Stockmark-DocReasoner-Qwen2.5-VL-32B | 約 320 億パラメータ | 文書読解に特化 | ○ 帳票・報告書の読み取り検証向き |
一覧は Hugging Face の Stockmark 公式アカウント で確認できます。
性能はどう発表されているか
同社の 2025 年 3 月の発表によれば、Stockmark-2-100B-Instruct-beta は約 2.0 兆トークン (英語 60%、日本語 30%、コード 10%) で学習されています。
自社で作成した業務知識のテストセットにおいて 正答率 90% を記録し、比較対象とした GPT-4o の 88% をわずかに上回ったと説明されています。日本語 MT-Bench でも国内のフルスクラッチ開発モデルを上回ったとしています。
上記の数値はストックマーク社が自社で作成したテストセットによる自社測定であり、第三者が同じ条件で再現した結果ではありません。「GPT-4o より優秀」と断定できる材料ではなく、あくまで「日本語の業務知識という土俵では互角以上に戦える設計思想がある」と読むのが妥当です。導入判断は自社の実データで試してから行ってください。
次のセクションでは、この無料のモデルを実際に動かすときに「どこにお金がかかるのか」を分解します。
料金 — モデルは¥0、コストは「動かす場所」に発生する
ここが最も誤解されやすい部分です。モデル本体の価格はゼロですが、大規模言語モデルは動かすための計算資源を必要とします。費用はライセンスではなく、実行環境に発生します。
上記のうち、クラウド GPU の金額は事業者やインスタンス種別で大きく変動します。編集部が「月 10 時間程度の検証利用」を前提に置いた概算であり、契約前に必ず利用予定の事業者の料金表で確認してください。
法人向けサービス Aconnect の料金
ストックマークは法人向けに Aconnect (エーコネクト) を提供しています。これは 2025 年 7 月 1 日に、従来の情報収集サービス「Anews」からリブランドされたものです (公式ニュース)。
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 提供形態 | 業務に接続する AI エージェント型のクラウドサービス (SaaS) | 公式サイト |
| 主対象 | 製造業の研究開発・新規事業・知財戦略の部門 | 公式サイト |
| 情報源 | 国内外 約 35,000 サイトのニュース・論文・特許・レポート | 公式サイト |
| 料金 | 非公開 (要問い合わせ)。課題に応じた個別提案の形式 | 公式サイト |
| 無料トライアル | あり (機能・ユーザー数の制限なしと記載) | 公式サイト |
Aconnect の料金は公式サイトに掲載されておらず、問い合わせによる個別見積です。編集部は金額を推測しません。中小企業が料金非公開サービスに接するときの鉄則は、問い合わせる前に「月いくらまでなら出せるか」を自社で決めておくことです。先に上限を伝えれば、提案が予算外だった場合に短時間で判断でき、双方の時間を無駄にしません。
料金の全体像がつかめたところで、次は「そもそも何時間削れる話なのか」を分解します。
市場調査の「週5時間」はどこに消えているか
編集部が中小企業の企画・営業担当者の作業を想定して分解すると、週次の情報収集は以下のように積み上がります。
- 業界ニュースの巡回と拾い読み: 週 120 分
- 競合サイト・製品ページの差分確認: 週 60 分
- 調べた内容の要約メモ作成: 週 90 分
- 社内共有用の週報にまとめ直す: 週 60 分
- 合計 週 約 5.5 時間
- 収集した記事を LLM にまとめて投入: 週 20 分
- 生成された要約の事実確認と取捨選択: 週 45 分
- 週報テンプレートへの流し込みと加筆: 週 25 分
- 合計 週 約 1.5 時間
編集部のシミュレーション。削減幅は担当者のスキル・情報量・確認基準によって変動します
差分はおよそ 週 4 時間 です。記事タイトルに掲げた「週5時間」は、複数拠点や複数製品ラインを抱えて調査対象が広い場合を想定した上限側の目安であり、すべての企業で同じ効果が出ることを保証するものではありません。
生成 AI で最も確実に短縮できるのは、収集した情報を要約し、体裁を整え、共有用の文章に書き直す工程です。逆に「何を情報源にするか」の判断と「この記述は事実か」の確認は人間に残ります。導入検討では、まとめ直しの工数がどれだけあるかを先に数えてください。ここが週 2 時間未満なら、投資対効果 (ROI) は出にくくなります。
では、その下ごしらえを実際にどう動かすのか。3 つのルートを比較します。
使い方 — 中小企業が取れる 3 ルート
| ルート | 手間 | 初期費用 | 機密データの扱い | 向いている企業 |
|---|---|---|---|---|
| A. NVIDIA NIM の API で試す | 小 | ¥0 (無料枠) | 外部送信される | まず精度を確かめたい全社 |
| B. 13B モデルを社内 PC で動かす | 中 | 既存 PC で ¥0 | 完全に社内で完結 | 図面・顧客情報を扱う製造業・士業 |
| C. Aconnect のトライアル | 小 | ¥0 (試用期間) | 提供元のクラウド | 研究開発部門を持つ企業 |
ルート A: NVIDIA NIM 経由で API から試す
Stockmark-2-100B-Instruct は NVIDIA が運営するモデルカタログ上でホストされており、自社に GPU がなくても API 経由で呼び出せます (モデルページ)。
開発者登録を行うと試用クレジットが付与され、その範囲内であれば追加費用なしで動作を確認できます。付与量や条件は変更されることがあるため、必ず公式ページで最新の条件を確認してください。エンドポイントは OpenAI 互換の形式のため、既存の社内ツールがあれば接続先の差し替えで済む場合があります。
ルート A は手軽ですが、送信した文章は自社のネットワークを離れます。顧客名・単価・図面情報・未公開の開発計画を含むデータをそのまま投げてはいけません。試用段階では、公開されている業界ニュースなど「外に出しても問題のない情報」だけで精度を評価し、機密を扱う本番運用に進む場合はルート B を検討してください。
ルート B: 13B の軽量モデルを社内で動かす
機密性を優先するなら、130 億パラメータの stockmark-13b-instruct を社内環境で動かす構成が現実的です。こちらも MIT ライセンスで、商用利用が可能です。
960 億パラメータの 100B 版は高性能な GPU を前提とするため、中小企業が社内サーバーで常時稼働させるのは現実的ではありません。一方の 13B クラスであれば、メモリを十分に積んだ Mac や GPU 搭載 PC で動かせる範囲に入ります。
実行手段としては、ローカルで大規模言語モデルを動かすためのツールを併用します。手順の全体像は Ollama でローカル LLM を動かす手順 と LM Studio の使い方 で解説しているので、あわせて参照してください。社内文書を読ませて検索できる状態にしたい場合は AnythingLLM の社内ナレッジ構築 が近い用途です。
ルート C: Aconnect の無料トライアル
自社でモデルを動かす体力がない場合は、完成品として提供されている Aconnect のトライアルが早道です。約 35,000 サイトから情報を自動収集し、技術調査や特許周辺の探索、調査結果の組織内共有までを一つの画面で行えます。
ただし主対象は製造業の研究開発部門です。小売・飲食・サービス業の一般的な競合調査には機能が過剰になる可能性があるため、トライアル期間中に「自社の日常業務で本当に毎日開くか」を必ず確認してください。
次のセクションでは、これらを実際の中小企業の一日に落とし込みます。
具体シナリオ: 従業員 25 名の部品メーカーの場合
営業企画を兼務する取締役が、毎週金曜の午後に「業界動向レポート」を作っているとします。競合 4 社の製品ページ更新、業界紙 3 誌の記事、展示会の告知を確認し、A4 で 2 枚にまとめて営業会議に出す運用です。
この会社が最初に取るべき行動は、社内サーバーの構築ではありません。1 週間分の公開ニュース記事だけを手元に集め、ルート A の無料枠で「この記事群を製品カテゴリ別に整理し、競合の動きを 300 字で要約して」と指示することです。所要時間は準備を含めて 30 分程度です。
ここで出力の質が業務水準に届いていれば、次の週に同じ手順を繰り返し、削減時間を実測します。2 週続けて 1 時間以上削れたなら、機密を含む社内資料にも広げる価値があると判断し、ルート B の社内運用へ進みます。届かなければ、その時点で撤退しても失ったのは 1 時間だけです。
生成 AI の導入で最も多い失敗は、効果を測らないまま契約と設定作業だけが積み上がることです。無料枠で試せるツールを扱うときこそ、「2 週間試し、削減時間を実測し、継続か撤退かを決める」と先に宣言してください。撤退しても損失がほぼゼロで済むのが、MIT ライセンスのモデルを使う最大の利点です。
この判断の流れを、次のセクションで 4 週間の具体的な手順に落とし込みます。
導入ステップ
この 4 週間の流れを崩さなければ、投資判断は数字に基づいて行えます。
他の調査系 AI との使い分け
Stockmark のモデルは「日本語の業務文書を扱う土台」であり、Web を横断的に検索して出典付きで答える用途はカバー範囲が異なります。編集部の整理は以下のとおりです。
| 用途 | 適した選択肢 | 理由 |
|---|---|---|
| 社外に出せない資料の要約 | Stockmark の 13B モデル (社内実行) | データが自社ネットワークから出ない |
| 日本語の業界文書を大量に整理 | Stockmark の 100B モデル (API) | 日本語と業務知識に最適化されている |
| 出典リンク付きの Web 横断調査 | Perplexity のリサーチ機能 | 検索と引用提示に特化している |
| 長時間かけた深掘り調査レポート | Gemini Deep Research | 複数ソースを自動巡回して報告書化する |
| 手元の資料だけを根拠に答えさせる | NotebookLM | 投入した資料の外に出ない設計 |
つまり Stockmark は既存ツールの置き換えではなく、「日本語かつ機密寄りの領域」を埋める補完役として位置づけるのが妥当です。
まとめ
ストックマークの日本語特化モデルは、MIT ライセンスで公開された数少ない国産の実用級 LLM です。モデル本体の費用はゼロで、商用利用にも制限がありません。
一方で「登録してすぐ使える」窓口はなく、最初の一歩には技術的な手間が残ります。中小企業にとっての正しい入り方は、NVIDIA のモデルカタログ経由で無料枠を使い、公開情報だけで 2 週間試し、削減時間を実測することです。効果が確認できてから社内運用や Aconnect の商談に進めば、判断を誤るリスクを大きく減らせます。
関連記事として Ollama でローカル LLM を動かす手順、LM Studio の使い方、Perplexity のリサーチ機能 もあわせて参照してください。
出典・参考情報
- ストックマーク株式会社 公式サイト — 会社概要と提供サービス
- Stockmark-2-100B-Instruct (Hugging Face) — ライセンス・パラメータ数・学習データ構成
- stockmark-13b-instruct (Hugging Face) — 軽量モデルのライセンスと仕様
- Hugging Face の Stockmark 公式アカウント — 公開モデルの一覧
- 1,000 億パラメータ LLM 公開のお知らせ (2025-03-18) — ベンチマーク結果の発表元
- Anews から Aconnect へのリブランド (2025-07-01) — サービス名称変更の公式発表
- Aconnect 公式サイト — 機能・対象業種・無料トライアル
- NVIDIA モデルカタログの Stockmark-2-100B-Instruct — API 経由での利用
よくある質問
Q: 本当に無料で商用利用できますか? A: モデル本体については、Hugging Face 上で MIT ライセンスとして公開されており、著作権表示を残す条件で商用利用が認められています。ただし動かすための計算資源 (PC・GPU・API 利用料) は別途発生します。
Q: パソコン 1 台で動かせますか? A: 130 億パラメータの stockmark-13b-instruct であれば、メモリを十分に積んだ Mac や GPU 搭載 PC で動かせる範囲です。960 億パラメータの 100B 版は高性能 GPU を前提とするため、社内 PC 単体での運用は現実的ではありません。
Q: ChatGPT より優秀ということですか? A: そう断定はできません。ストックマーク社が自社作成の業務知識テストで正答率 90%、GPT-4o が 88% だったと発表していますが、これは発表元の自社測定です。汎用的な用途で常に上回るという意味ではありません。
Q: Aconnect の料金はいくらですか? A: 公式サイトに料金は掲載されておらず、要問い合わせです。編集部は金額を推測しません。無料トライアルが用意されているため、まず試用してから見積を取る流れを推奨します。
Q: 社内の機密資料を扱っても大丈夫ですか? A: 社内で完結する構成 (ルート B) なら、データは自社ネットワークから出ません。API 経由 (ルート A) や Aconnect は外部にデータが渡るため、社内規程と提供元の取り扱い条件を確認したうえで判断してください。
Q: Anews という名前で聞いたことがありますが、別物ですか? A: 同じ系譜のサービスです。2025 年 7 月 1 日にリブランドされ、名称が Aconnect に変わりました。
Mira / AI経営ラボ 編集長
もっと深く学ぶための関連書籍
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料金プラン
| プラン | 料金 (JPY) | 請求 |
|---|---|---|
| Stockmark-2-100B-Instruct / stockmark-13b-instruct (MIT ライセンス、モデル本体) | ¥0 | 月額 |
| NVIDIA NIM 経由の API お試し (開発者登録の無料クレジット枠) | ¥0 | 月額 |
| 自社 PC で 13B モデルを動かす場合の電気代 (編集部試算・月割) | ¥1,500 | 月額 |
| クラウド GPU を時間借りして 100B モデルを試す場合 (編集部試算・月 10 時間利用) | ¥8,000 | 月額 |
👍 メリット
- モデル本体が MIT ライセンスで公開され、商用利用が明示的に許可されている
- 日本語と業務知識に特化した設計で、社名・製品名・業界用語の取り違えが起きにくい
- 自社サーバーや社内 PC で動かせるため、機密資料を外部に送信せずに調査補助が使える
- 13B (130 億パラメータ) の軽量モデルもあり、高価な GPU がなくても試せる選択肢がある
- 法人向けの Aconnect には無料トライアルが用意されており、契約前に実務で試せる
👎 デメリット
- 100B (960 億パラメータ) 版は自社で動かすには高性能 GPU が必要で、中小企業には現実的でない
- 法人向け Aconnect の料金は非公開で、問い合わせないと予算感がつかめない
- Aconnect は製造業の研究開発部門を主対象としており、業種によっては機能が過剰になる
- ChatGPT のような「登録してすぐ使える」窓口がなく、最初の一歩に技術的な手間がかかる