業務自動化

介護事業所のケアプラン作成をZapierで自動化 — 利用者の状態変化をケアマネジャーに自動通知するレシピ

介護・福祉 の業務自動化レシピ
業種介護・福祉
ツールZapier
難易度★★☆ 中
設定時間約 45 分

介護事業所では、利用者の状態変化を記録しても、担当者への共有が遅れることがあります。Zapier を使えば、バイタル異常や服薬変更をきっかけに、通知や見直し候補の登録を自動化できます。この記事では、45 分で試せる 2 つのレシピと、個人情報に配慮した運用方法を紹介します。

読了時間:約 10 分

この記事のポイント

編集長の見解:自動化の目的は、ケアマネジャーの判断を置き換えることではありません。記録の確認と通知にかかる時間を減らし、状態変化を確認する時間を確保することが重要です。まずは 1 つの通知から小さく試し、現場の負担と個人情報の扱いを確認しながら広げましょう。

1️⃣ 介護事業所のケアマネジャーが抱える 3 つの課題

介護事業所では、訪問介護計画書の作成、モニタリング、家族対応、記録など、多くの業務が発生します。中でも負担になりやすいのが、利用者の状態変化を記録し、関係者へ伝える作業です。

課題 1:記録入力の二重化による時間ロス

現場では、紙の連絡ノートと記録システムの両方へ入力することがあります。システムに直接入力した後、電話や口頭で報告する場合もあります。

この二重入力による時間ロスは、1 人の利用者につき週 30 分から 1 時間程度発生すると編集部では想定しています。これは編集部の推定であり、特定の調査結果に基づくものではありません。

注意:二重入力の解消だけを目的に、記録システムを入れ替えるのは現実的でない場合があります。既存の記録フローを活かし、「伝える」部分から効率化しましょう。

課題 2:状態変化の見逃しによる見直しの遅れ

体調変化や服薬変更は、ケアプラン見直しの重要なきっかけです。しかし、日々の記録に埋もれ、確認が遅れることがあります。

記録を確認するタイミングが担当者ごとに異なると、見逃しのリスクも残ります。自動通知は、確認のきっかけをそろえる手段になります。

課題 3:チーム内の情報共有不足による対応のばらつき

同じ利用者を複数のスタッフが担当すると、情報が均等に伝わらないことがあります。担当者によって伝達速度が異なると、対応にもばらつきが生じます。

3 つの課題に共通するのは、「記録」と「通知」が手動で行われていることです。次に、この構造を Zapier で改善する基本設計を確認します。

編集部の整理:最初に自動化するなら、すべての記録ではなく、バイタル異常や服薬変更など、対応につながりやすい情報に絞るのが現実的です。

2️⃣ Zapier で作る「状態変化自動通知」の基本設計

Zapier は、複数のクラウドサービスをつなぐ自動化ツールです。「トリガー」と呼ぶきっかけと、「アクション」と呼ぶ実行を組み合わせ、Zap という自動化の流れを作ります。

基本構成:トリガー → 条件判定 → アクション

介護業務に当てはめると、次の構成になります。

要素内容具体例
トリガー新しい記録が作成されたバイタル記録が追加された
フィルター条件を満たす記録だけに絞る血圧が基準値を超えた
アクション担当者へ通知するSlack にメッセージを送る

この構成を使えば、服薬変更の記録をきっかけに、ケアマネジャーのタスクを作ることもできます。

介護記録システムとの連携方法

連携方法は、主に次の 3 つです。

編集部の推奨:最初から全業務を連携せず、「バイタル異常の通知」など 1 つの用途で試しましょう。通知の正確さと現場の負担を確認してから、対象を広げます。

フィルター設定の考え方

すべての記録を通知すると、スタッフが通知を確認しなくなるおそれがあります。本当に必要な情報だけに絞り込みましょう。

通知するケース通知しなくてよいケース
血圧が設定した基準値を超えた正常範囲内のバイタル記録
食事量が前日比で 30% 以上減少食事量の微減
服薬変更の記録が入った変更のない定期記録
転倒・事故の記録日常的な移動記録

条件を絞るほど、通知後の確認もしやすくなります。次は、具体的な 2 つのレシピを見ていきます。

3️⃣ レシピ 1:バイタル異常を自動検知して担当者に通知

血圧や体温の記録が設定した基準値を超えたら、担当ケアマネジャーへ Slack で知らせるレシピです。

設定手順

バイタル異常通知の設定手順
ステップ 1:トリガーを設定する

Zapier で新しい Zap を作成し、「記録システムで新しいバイタル記録が作成された」を選びます。対応アプリは、アプリ一覧から選択できます。

ステップ 2:フィルターで条件を絞る

Filter ステップを追加し、収縮期血圧が 140 以上、または拡張期血圧が 90 以上の場合だけ通過させます。体温は 37.5 度以上を目安にします。これらは、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインにおける「高値血圧」区分と、発熱の一般的な目安に基づく編集部の設定例です。医師や看護師と相談し、事業所に合う基準値を設定してください。

ステップ 3:Slack 通知を設定する

アクションに Slack を選び、通知先と本文を設定します。利用者 ID、記録日時、バイタル値、記録者を差し込む設計にします。

ステップ 4:テスト実行する

条件を満たすデータと、満たさないデータの両方でテストします。フィルターと通知先が正しく動作するか確認しましょう。

ステップ 5:運用を開始する

テスト後に Zap を ON にします。最初の 1 週間は、不要な通知や通知漏れがないか毎日確認してください。

通知文面のテンプレート

バイタル異常通知のフロー
1. 記録入力

訪問介護員がバイタルを記録

2. Zapier が検知

新しい記録を検知

3. フィルター判定

基準値を超えたか判定

4. Slack 通知

担当ケアマネジャーへ通知

Slack の通知文面には、利用者 ID、バイタル値、基準値、記録者、記録日時を含めます。氏名や病歴など、不要な個人情報は送らない設計が適切です。

【要確認】バイタル異常の記録が入りました

利用者 ID:A-001
記録日時:2026 年 5 月 15 日 09:30
血圧:152/95 mmHg(基準値:140/90)
体温:36.8 度
記録者:訪問介護員

※ケアプラン見直しの要否をご判断ください。

編集部のアドバイス:通知には「ケアプラン見直しの要否をご判断ください」と入れましょう。受け取ったケアマネジャーが、次の行動を判断しやすくなります。

編集部シミュレーション:月間の時間削減効果

以下は編集部のシミュレーションです。利用者 30 名の訪問介護事業所で、バイタル記録が 1 日 15 件、異常値が週 2 件発生する想定です。

バイタル異常通知の導入効果(編集部シミュレーション)
導入前(手動確認)
  • 記録を 1 件ずつ目視確認(1 日 15 分)
  • 異常値の発見漏れが月 2〜3 件
  • 発見後の連絡に 1 件 10 分
  • 週の確認工数:約 2 時間
導入後(Zapier 自動通知)
  • 異常値だけを自動通知(確認は 1 日 2 分)
  • 発見漏れがほぼゼロになる想定
  • 通知後の確認は 1 件 3 分
  • 週の確認工数:約 30 分

編集部シミュレーション:週約 1.5 時間、月約 6 時間の削減が見込まれます

この試算は、通知と確認にかかる時間を比較したものです。医療費削減や重症化予防の効果を保証するものではありません。状態変化への対応は、医療職やケアマネジャーが個別に判断してください。

次のレシピでは、通知だけでなく、ケアプラン見直し候補のタスク化まで行います。

4️⃣ レシピ 2:服薬変更や食事量低下を記録したら見直しを提案

服薬変更や食事量低下を検知し、ケアプラン見直しのタスクを自動生成するレシピです。通知の後に必要な作業を登録し、対応漏れを減らします。

設定手順

ケアプラン見直し提案の設定手順
ステップ 1:トリガーを設定する

「服薬変更または食事量の記録が追加された」をトリガーにします。記録システムの服薬情報フィールドを、変更のきっかけにできる場合があります。

ステップ 2:「変更あり」だけに絞る

「服薬変更あり」または「食事量が前日比 30% 以上減少」という条件を設定します。すべての記録を対象にすると、通知が多くなり、確認されなくなるおそれがあります。

ステップ 3:タスク管理ツールに登録する

Todoist、Asana、Google タスクなどに「ケアプラン見直し候補:利用者 ID A-001(服薬変更)」というタスクを作成します。担当者と期限を設定します。

ステップ 4:Google カレンダーに予定を登録する

ケアマネジャーの Google カレンダーに、30 分程度のレビュー予定を登録します。利用者 ID と変更内容は、事業所の規程に沿って説明欄へ入れてください。

ステップ 5:通知とエスカレーションを設定する

タスクが 3 日間未完了の場合に、管理者へ通知する設定を行います。重要な連絡は、電話など別の経路も確保してください。

フィルター条件の具体例

条件は、記録システムのフィールド名に合わせて設定します。次は編集部が推奨する設定例です。

記録種別フィルター条件アクション
服薬変更変更区分=「変更あり」タスク作成+カレンダー登録
食事量低下前日比 30% 以上減少タスク作成+担当者通知
転倒・事故事故区分=「転倒」緊急通知+タスク作成
体重減少1 か月で 2 kg 以上減少タスク作成+カレンダー登録

編集部の警告:条件を緩めすぎると、タスクが積み上がります。緊急度を設定し、優先順位を付けられるようにしましょう。

編集部シミュレーション:見直しの遅延防止効果

以下は編集部のシミュレーションです。ケアマネジャー 1 名が利用者 30 名を担当し、服薬変更・食事量低下の記録が月 10 件、そのうち 6 件で見直しが必要になる想定です。

ケアプラン見直しの遅延防止効果(編集部シミュレーション)
導入前(手動管理)
  • 候補の洗い出しに週 2 時間
  • 見直し漏れが月 1〜2 件発生
  • 漏れの発覚は家族からの指摘がきっかけ
  • 対応までの平均日数:7 日
導入後(Zapier 自動提案)
  • 候補が自動でタスク化される
  • 見直し漏れがほぼゼロになる想定
  • タスク化により対応漏れを確認しやすい
  • 対応までの平均日数:2 日

編集部シミュレーション:月約 4 時間の削減に加え、見直し漏れのリスク低減が見込まれます

自動化によって候補の確認はしやすくなりますが、見直しの要否はケアマネジャーが判断します。次に、導入から運用までの流れを確認します。

5️⃣ 導入ステップ:Zapier を介護事業所で運用する流れ

2 つのレシピを試す前に、連携可否、テスト、スタッフへの周知を順番に確認します。

介護事業所への導入フロー
1. 連携可否を確認

記録システムと Zapier の接続方法を調べる

2. テスト環境を用意

実データを使わずに通知を検証する

3. 小さく運用開始

1 つの通知から現場で試す

4. 月次レビュー

通知漏れや誤通知を確認する

ステップ 1:記録システムの連携可否を確認

Zapier のアプリ検索で、現在使っている記録システムを検索します。未対応の場合は、API や Webhook などの外部連携機能を確認してください。

Google フォームを中継点にする方法もあります。ただし、二重入力になるため、現場の負担が増えない設計が必要です。

ステップ 2:テスト環境で動作確認

本番運用の前に、テスト用の記録と通知先を用意します。

ステップ 3:スタッフへ周知して運用開始

運用前に、何が自動化されるかをスタッフへ説明します。スタッフには、これまでどおり正確に記録を入力してもらいます。

編集部のアドバイス:開始後 1 週間は、可能であれば手動通知と自動通知を照合します。自動通知の漏れを確認し、現場の安心感につなげましょう。

ステップ 4:月次レビューで条件を調整

月 1 回、通知件数、通知漏れ、誤通知、エラー率を確認します。数値は事業所の業務量に合わせた確認の目安です。

チェック項目確認内容調整の目安
通知件数1 日あたりの通知数多すぎる場合は条件を厳しくする
通知漏れ見逃したケース原因を確認して条件を見直す
誤通知不要な通知条件を絞る
エラーZap の失敗状況原因を調査する

各事業所で通知の量と対応時間を記録すると、導入効果を判断しやすくなります。次は、導入時に起こりやすい失敗を確認します。

6️⃣ 編集部の警告:自動化で失敗する 3 つのパターン

Zapier は便利ですが、設計を誤ると現場の負担が増えます。ここでは、避けたい失敗例を紹介します。

失敗パターン 1:通知が多すぎる

すべての記録を通知すると、1 日に数十件届くことがあります。通知を確認しない状態になれば、自動化の効果が失われます。

回避策:「異常値のみ」「変更ありのみ」など、条件を絞ります。緊急時は電話、通常時は Slack など、緊急度で通知先を分けましょう。

失敗パターン 2:連携仕様の変更で動かなくなる

クラウドサービスの連携仕様が変更されると、Zap が動かなくなる場合があります。重要な連絡を Zapier だけに任せるのは避けてください。

回避策:Zapier のエラー履歴を定期的に確認します。緊急時の連絡には、電話など別の経路も用意しましょう。

失敗パターン 3:個人情報を外部サービスへ送りすぎる

介護記録には、氏名、病歴、服薬情報などが含まれます。Zapier を経由する場合は、送信する情報を必要最小限にします。

回避策:氏名の代わりに利用者 ID を使い、病歴などの詳細を通知に含めない方法があります。事業所の個人情報保護規程に照らし、外部送信の可否を事前に確認してください。

編集部の警告:外部サービスへデータを送信する場合は、安全管理措置や利用者への説明が必要になることがあります。Zapier の利用規約とプライバシーポリシーを確認し、必要に応じて事業所の規程を見直してください。

個人情報の確認と通知経路の冗長化を済ませてから、本番運用へ進みましょう。

7️⃣ よくある質問

Q1. Zapier の無料プランでどこまで自動化できますか?

無料プランにはタスク実行回数などの上限があります。最新のプラン内容は、Zapier 公式サイトで確認してください。

バイタル異常の通知だけなら、少ない実行回数で収まる可能性があります。複数のレシピを使う場合は、有料プランを検討します。

Q2. 介護記録システムが Zapier 未対応の場合は?

Google フォームや Google スプレッドシートを中継点にする方法があります。訪問介護員がフォームへ入力し、Zapier が新しい行を検知して通知します。

ただし、二重入力になる場合があります。現場スタッフの負担を測り、導入前より作業が増えないか確認してください。

Q3. 個人情報保護の観点で注意する点は?

通知文面に含める情報を最小限にします。氏名の代わりに利用者 ID を使い、病歴などの詳細情報を通知へ含めない方法があります。

Zapier の利用規約とプライバシーポリシーを確認し、データの保存場所や保存期間も把握してください。事業所の規程や契約内容も確認しましょう。

Q4. 導入費用はどのくらいですか?

無料プランの範囲で始める場合、Zapier の利用料はかかりません。無料プランの上限を超える場合は、有料プランの料金を確認してください。

最新の料金やタスク実行回数は、Zapier 公式サイトで確認します。介護記録システム側の連携費用は、サービス提供企業へ確認してください。

Q5. スタッフの IT リテラシーが高くなくても導入できますか?

設定は管理者やケアマネジャーが行い、現場スタッフは普段どおり記録を入力します。新しい操作を増やさない設計なら、導入時の説明も簡潔にできます。

Q6. 通知後の見直し作業は誰が行いますか?

Zapier が自動化するのは、通知やタスク作成です。ケアプランを見直すかどうかは、ケアマネジャーが記録と利用者の状態を確認して判断します。

自動化で生まれた時間を、状態確認や関係者との調整に充てることが導入の価値です。

Q7. 複数の事業所を担当している場合も使えますか?

事業所ごとに Zap を作成すれば、分けて運用できます。Slack の通知先やタスクの担当者も事業所ごとに設定し、情報が混ざらないようにします。

8️⃣ 参考情報

編集長の総括:介護事業所の記録業務は、利用者の状態変化を捉え、ケアの質を高めるための重要な業務です。Zapier による自動通知は、確認と共有を仕組み化する小さな一歩になります。まずは 1 つのレシピから試し、費用、通知の精度、個人情報の扱いを確認しながら運用してください。

Mira / AI経営ラボ 編集長