業務自動化

旅館の献立表をZapierで自動共有 — 納品書データから翌週の食材発注リストを自動作成するレシピ

宿泊業・飲食業 の業務自動化レシピ
業種宿泊業・飲食業
ツールZapier
難易度★★☆ 中
設定時間約 120 分

旅館・料亭の食材発注は、電話・FAX・メール・表計算ソフトに分散しがちです。本記事では、納品書データをZapierで集約し、翌週の発注リストを半自動で作る方法を解説します。編集部の試算では、週あたり約2〜3時間の削減が見込めます。

読了時間: 約12分

この記事のポイント

編集長の見解

人手不足が続く宿泊業では、発注業務の自動化が有力な改善策になります。ただし、最初から全自動を目指す必要はありません。まずは「転記ミスの削減」から始め、料理長の判断を残した運用にすることが現実的です。


🏨 旅館の発注業務における3つの課題

課題1: 納品書がFAX・メール・紙に分散する

多くの旅館・料亭では、仕入先ごとに連絡手段が異なります。青果店はFAX、鮮魚店は電話、乾物店はメールというケースもあります。

その結果、料理長や経理担当者は次の作業を行います。

編集部の試算では、納品書の整理だけで週あたり2〜3時間かかる場合があります。実際の時間は、仕入先数や発注件数によって変わります。

警告: 形式がバラバラのまま自動化しない

納品書の形式が統一されていない状態で、いきなり自動化すると混乱を招きます。まずは主要な仕入先3社に絞り、メール添付のExcelやCSVなど、データ化しやすい形式への変更を相談しましょう。

課題2: 献立変更で発注漏れが起きる

旅館の献立は、季節や仕入れ状況、宿泊客の要望で変わります。次の場面では、発注ミスが起きやすくなります。

こうしたミスは、食材の廃棄や提供遅延につながります。発注内容を共有し、誰でも確認できる状態にすることが大切です。

課題3: 料理長の経験に依存する

発注では、料理長の経験が判断材料になることも多くあります。

こうした判断を記録しておけば、料理長が不在でも対応しやすくなります。業務を見える化することは、引き継ぎや事業継続にも役立ちます。

次のセクションでは、これらの課題を解決するZapierの全体像を紹介します。


🔄 Zapierで実現する献立・発注管理の全体像

Zapierは、複数のクラウドサービスをつなぐ自動化サービスです。本レシピでは、納品書データの集約から発注リストの通知までを半自動化します。

Zapierによる納品書データ自動集約の全体フロー
ステップ1: 納品書データをGoogleスプレッドシートに保存

仕入先からのメールをZapierが検知し、添付ファイルをGoogleドライブに保存します。メール本文の必要項目は、スプレッドシートへ追記します。

ステップ2: 献立表と納品データを照合

週初めに、翌週の献立表と蓄積した納品データを照合します。不足する食材と必要数量を抽出します。

ステップ3: 発注リストを作り、関係者へ通知

不足食材をリスト化し、Slackやメールで料理長と経理担当者へ送信します。承認後は、仕入先への発注に進みます。

仕入先からの納品書データを集約し、翌週の発注リストを作る流れ

なぜZapierなのか? 3つの理由

Zapierを選ぶ理由は、次の3点です。

理由内容
コード不要で構築できるプログラミング知識がなくても、画面上で自動化の流れを作れる
業務ツールと連携できるGmail、Googleスプレッドシート、Slackなどと連携できる
無料で試せる無料プランでは月間100タスクまで利用できる

💡 補足: 大規模言語モデル(LLM)は不要

本レシピでは、AIによる文章生成や画像認識を使いません。Zapierの標準機能を中心に構成するため、費用を抑えて試せます。

必要なツール構成と月額コスト目安

料金は2026年8月時点の情報です。料金や利用上限は変更される場合があります。契約前に各サービスの公式サイトで確認してください。

ツール用途月額コスト(目安)
Zapier(無料プラン)自動化フローの実行¥0(月間100タスクまで)
Zapier(有料プラン)自動化フローの実行約 ¥3,000〜(米ドル建て、為替により変動)
Googleアカウント(無料)Gmail・スプレッドシート・ドライブ¥0
Google Workspace(有料)ビジネス用メール・ストレージ1人あたり月額 ¥750〜
Slack(無料プラン)発注リストの通知¥0

編集部の推定: 客室数10室程度の小規模旅館で、発注件数が週20件程度の場合、月間タスク数は約80〜100件と見込まれます。これは、週20件の発注を4〜5週処理する前提の試算です。実際のタスク数は、1件のメールに含まれる添付数や設定によって変わります。

タスク数が無料プランの上限に近づく場合は、有料プランを検討します。有料プランの料金は約 ¥3,000〜ですが、米ドル建てのため為替で変動します。

次のセクションでは、具体的なZapierレシピを5つのステップに分けて解説します。


⚙️ 具体的なZapierレシピ: 納品書から発注リスト生成まで

ここでは、起動条件から通知までの流れを、5つのステップに分けて説明します。経営者は、まず主要な仕入先3社を対象に試すと導入しやすくなります。

ステップ1: Gmailで納品書メールを受信したら起動する

Zapierの起動条件には、Gmailの「新しいメールを受信したら」を設定します。納品書だけを検知するため、次の条件を指定します。

⚠️ 警告: 起動条件を厳密に設定する

条件が緩いと、見積もり依頼や問い合わせまで取り込む可能性があります。テスト段階で、対象メールだけが検知されるか確認してください。

ステップ2: 添付ファイルをGoogleドライブに保存する

検知したメールの添付ファイルを、Googleドライブの指定フォルダへ保存します。

設定項目設定値
連携アプリGoogleドライブ
アクションファイルをアップロード
保存先フォルダ旅館名 > 納品書 > 2026年 > 8月
ファイル名[仕入先名]_[日付]_納品書.pdf

仕入先名と日付をファイル名に含めると、後から検索しやすくなります。メールの差出人や件名を使って、ファイル名を組み立てることもできます。

ステップ3: スプレッドシートにデータを追記する

添付ファイルを保存したら、メールから必要な項目をスプレッドシートへ追記します。

列名内容データソース
受信日時メールを受信した日時Gmail
仕入先名メールの差出人Gmail
件名メールの件名Gmail
品目名納品された食材名メール本文または手動入力
数量納品された数量メール本文または手動入力
単価食材の単価メール本文または手動入力
金額数量 × 単価スプレッドシートの関数
添付ファイルURL保存したファイルのリンクGoogleドライブ

💡 ポイント: 最初はメール本文をそのまま保存する

仕入先ごとにメール形式が違う場合、最初から細かく自動抽出すると設定が複雑になります。まず本文を保存し、後からスプレッドシートで整理する方法が現実的です。

ステップ4: 翌週の献立表と照合し、不足食材を抽出する

蓄積した納品データと翌週の献立表を照合し、不足食材を抽出します。

処理の流れ:

  1. 献立表を作る: 曜日、食事区分、料理名、使用食材、必要数量を記入する
  2. データを照合する: スプレッドシートのVLOOKUP関数やQUERY関数を使う
  3. 不足食材を抽出する: 「発注リスト」シートに表示する

Zapierの「スプレッドシートの行を検索」や「コードを実行」アクションを組み合わせる方法もあります。最初は関数による照合から始めると、管理しやすくなります。

処理方法所要時間
献立表の作成スプレッドシートへ入力週あたり30分
納品データの集約Zapierで自動実行ほぼ不要
不足食材の抽出スプレッドシートの関数ほぼ不要
発注リストの確認料理長が目視で確認週あたり15分

ステップ5: 発注リストをSlackまたはメールで送信する

発注リストをSlackの「#発注管理」チャンネル、またはメールで送信します。

通知先メリットデメリット
Slack複数人で確認やコメントができる導入と運用ルールの整備が必要
メール誰でも確認しやすい重要な通知が埋もれやすい

編集長の見解: 最終承認を残す

自動化するのは転記と通知です。発注リストは下書きとして作成し、料理長または経理担当者が確認してから発注します。この手順を残すことで、数量や品目の誤りに気づきやすくなります。

次のセクションでは、このレシピを2時間で試すためのセットアップ手順を紹介します。


🛠️ 導入ステップ: 2時間で始めるセットアップ手順

ここでは、ITに詳しくない担当者でも進めやすいよう、4段階に分けて説明します。導入後1週間は、手作業の発注と並行して結果を確認します。

2時間で始めるセットアップ手順
ステップ1: Googleスプレッドシートの雛形を作成(30分)

「納品データ」「献立表」「発注リスト」の3シートを作ります。

  • 納品データ: 受信日時、仕入先名、品目名、数量、単価、金額、添付ファイルURL
  • 献立表: 翌週の献立、使用食材、必要数量
  • 発注リスト: 不足食材と必要数量を表示
ステップ2: Zapierと各サービスを連携する(30分)

Zapier、Gmail、Googleドライブ、Googleスプレッドシート、SlackまたはGmailを連携します。画面上でログイン認証を行うため、特別な知識は不要です。

ステップ3: テストデータで確認する(30分)

納品書を模したメールを送信し、ファイル保存、データ追記、不足食材の抽出、通知の4点を確認します。

ステップ4: 実際の納品書で運用する(30分)

テストが成功したら運用を始めます。最初の1週間は手作業の発注と並行し、結果を比較します。取りこぼしや誤検知、関数の動作も確認します。

所要時間は、ITリテラシーが中程度の場合の目安です

💡 時短テクニック: テンプレートを使う

Zapierには、「Gmail to Google Sheets」や「Gmail to Google Drive」などのテンプレートがあります。テンプレートを基に自館の運用へ調整すると、ゼロから作るより短時間で始めやすくなります。

次のセクションでは、自動化で起こりやすい失敗と回避策を説明します。


⚠️ 編集部の警告: 自動化で失敗する3つのパターン

自動化は、設定と確認を省くと逆効果になる場合があります。ここでは、特に注意したい3つの例を紹介します。

警告1: データ形式が統一されていない

仕入先ごとにメール本文や添付ファイルの形式が異なると、抽出ルールが複雑になります。

次の順番で進めます。

  1. 主要な仕入先3社に絞る
  2. 仕入先ごとに抽出ルールを設定する
  3. 運用後に対象を徐々に広げる

警告2: 最終承認なしで発注する

自動生成されたリストを、そのまま仕入先へ送ると誤発注のリスクがあります。料理長または経理担当者が、品目・数量・納期を確認してから発注してください。

警告3: いきなり全仕入先へ広げる

仕入先が多い場合は、最も納品頻度が高い1社で2〜4週間試します。その後、エラーの原因と対応手順を整理し、対象を増やします。

⚠️ 警告: 自動化は放置できない

仕入先、献立、メール形式が変わったときは、フローを見直します。月間タスク数が無料プランの上限である100件に近づいた場合も、利用状況を確認してください。

次のセクションでは、旅館や料亭の経営者、料理長からよく寄せられる質問に答えます。


❓ よくある質問

Q1: 無料プランで始められますか?

Zapierの無料プランでは、月間100タスクまで利用できます。客室数10室程度で発注件数が週20件の場合、編集部の推定では月間タスク数は約80〜100件です。実際のタスク数は設定によって変わるため、利用状況を確認しながら運用してください。

Q2: 料理長がITに詳しくなくても使えますか?

本レシピは、コードを書かずに構築できる構成です。最初の設定は、社内の若手スタッフや外部のサービス提供企業に依頼し、日常の確認は料理長が行う方法もあります。発注判断は料理長が担い、自動化はデータ整理と通知に限定すると導入しやすくなります。

Q3: 仕入先がFAXしか使えない場合はどうしますか?

次の方法を検討できます。

方法内容コスト・手間
FAXのメール転送サービスFAXをPDFに変換し、メールで受信する月額数百円〜
メール送付を依頼取引量の多い仕入先へ、メールでの送付を相談する交渉が必要
スキャンして手入力紙をスキャンし、表計算ソフトへ入力する手間がかかる

編集部の推奨: 取引量の多い仕入先には、メール送付を相談する方法が現実的です。取引量が少ない仕入先は、当面手入力のままにする選択肢もあります。


📚 出典・参考情報

掲載料金は2026年8月時点の情報です。料金、機能、利用上限は変更される場合があります。利用前に各サービスの公式サイトで確認してください。

ツール公式サイト備考
ZapierZapier公式サイト自動化サービス
Zapier料金Zapier料金ページ無料・有料プランの詳細
Google WorkspaceGoogle Workspace公式サイトビジネス向けサービス
SlackSlack公式サイトビジネスチャット

編集部メモ

本記事の料金と工数は、2026年8月時点の情報または編集部の試算です。実際の運用では、仕入先の形式、発注件数、為替、契約内容によって変わります。テストデータで動作を確認し、問題がないことを確認してから運用してください。

次のまとめで、旅館が最初に取り組む範囲を整理します。


まとめ: まずは転記ミスの削減から始めよう

本記事では、旅館・料亭の食材発注をZapierで半自動化する方法を紹介しました。

まずは主要な仕入先3社に絞り、発注リストの作成と通知から試します。自動化したリストは下書きとして扱い、料理長または経理担当者が最終確認してから発注してください。

編集部の試算では、条件が合えば週あたり約2〜3時間の削減が見込めます。ただし、削減時間や費用は運用条件によって変わります。自館の発注件数と作業時間を測り、無理のない範囲で改善を進めてください。


Mira / AI経営ラボ 編集長