業務自動化

自動車整備工場の車検リマインドを Zapier で自動化 — 満了 60 日前の案内で再入庫の取りこぼしを防ぐ

自動車整備工場 の業務自動化レシピ
業種自動車整備工場
ツールZapier
難易度★★☆ 中
設定時間約 90 分

整備工場の売上を最も静かに削るのは、値引きでも競合でもなく「案内を出し忘れた 1 台」です。本レシピは、顧客台帳の車検満了日を起点に、Zapier が毎朝自動で対象車を抽出し、60 日前と 30 日前に SMS・LINE・はがき用 CSV を生成する仕組みを、月額約 ¥3,000 から組む手順としてまとめます。

読了目安 8 分/設定所要 約 90 分/難易度 中

編集部の見解: 車検の再入庫案内は、代行業者に外注すると 1 通あたり数十円から百円台の費用がかかり、しかも「どの顧客にいつ出したか」が自社に蓄積されません。台帳を自社のスプレッドシートに置き、Zapier で抽出と送信だけを自動化すれば、月額 ¥3,000 台の固定費で案内履歴が丸ごと手元に残ります。整備工場にとっての本当の資産は案内の代行ではなく、蓄積された満了日データの方です。

このレシピで解決する事務作業

整備士 2〜5 名規模の工場で、車検の案内まわりに発生している手作業を洗い出すと、おおむね次の 6 つに整理できます。

  1. 満了日の目視チェック: 顧客台帳や車検証控えを月初にめくり、来月・再来月満了の車両を探す
  2. 案内リストの手作り: 抽出した車両を紙やメモに書き写し、電話・はがき・SMS のどれで出すか仕分ける
  3. はがきの宛名づくり: 宛名ソフトに 1 件ずつ手入力、または去年の宛名データを手で修正する
  4. SMS・LINE の個別送信: スマートフォンで顧客を検索し、定型文を貼り付けて 1 件ずつ送る
  5. 反応の追いかけ: 返信があった顧客を予定表に転記し、返信がない顧客に再度連絡する
  6. 二重送信の後始末: 「先週も同じ案内が来た」というクレームへの謝罪と、送信済みメモの整理

この一連の作業は、対象が月 40〜60 台の規模でも 月 8〜12 時間 に達することが珍しくありません。しかも作業が属人化しやすく、担当者が繁忙期に休むとその月の案内がまるごと止まります。次のセクションでは、そもそも案内タイミングをいつに置くべきかを、法定の有効期間から逆算して確認します。

案内タイミングの根拠となる法定サイクル

車検(継続検査)の周期は法令で決まっているため、案内タイミングは勘ではなく計算で決められます。国土交通省の自動車検査登録総合ポータルサイトによると、自動車検査証の有効期間は次のとおりです。

車両区分初回2 回目以降
自家用乗用自動車(軽自動車を含む)3 年2 年
貨物車(車両総重量 8t 未満)2 年1 年
貸渡自動車(レンタカー)2 年1 年
旅客運送事業用自動車(バス・タクシー)1 年1 年

出典: 自動車検査証の有効期間|自動車検査登録総合ポータルサイト(国土交通省)

なお、軽トラック・軽バンなどの軽貨物車は初回 2 年・2 回目以降も 2 年で、上表の貨物車(車両総重量 8t 未満)とは 2 回目以降の周期が異なります。軽貨物を多く扱う工場は、台帳の車両区分をこの 2 つに分けて持っておくと、満了日の更新ミスが減ります。

もう 1 つ、案内設計に直結する制度変更があります。国土交通省の報道発表によると、従来は「有効期間満了日の 1 か月前から満了日まで」に受検した場合に限り有効期間が短縮されませんでしたが、令和 7 年(2025 年)4 月 1 日から、この期間が「2 か月前から満了日まで」に延長されました。

💡 60 日前の一次案内が有効な理由: 2 か月前から受検しても有効期間が失われないため、顧客に「早めに入れても損はしません」と説明できるようになりました。以前は「早く入れると期間が短くなる」ため 1 か月前案内が主流でしたが、現在は 60 日前に案内を出し、繁忙期(3 月前後)の入庫を前倒しで分散させる運用が取りやすくなっています。出典: 来年4月より、車検を受けられる期間が延びます(国土交通省 報道発表)

つまり、満了日さえ台帳にあれば、案内すべき日は機械的に決まります。ここから先は、その計算を人間ではなく Zapier に任せる設計に入ります。

完成形(自動化フロー)

Zapier × 車検リマインド 自動化フロー
📗
01
顧客台帳
Google スプレッドシートに車検満了日・連絡手段・送信済みフラグを保持
02
毎朝 8:00 起動
Schedule by Zapier が定時にフローを開始
🧮
03
残日数で絞り込み
台帳の数式が出した残日数が 60 / 30 / 7 の行だけを Filter で通す
📮
04
手段で分岐
Paths で SMS / LINE / はがき用 CSV 行追加に振り分け
05
送信ログを書き戻し
台帳の該当行に送信日を記録し、二重送信を構造的に防ぐ

毎朝 1 回だけ動き、対象日に該当する車両にのみ通知を出す。送信済みフラグの書き戻しまでを 1 本の Zap で完結させる

このうち 05 の「書き戻し」を省略すると、後述する二重送信事故が必ず起きます。設計上の要なので、手順でも独立したステップとして扱います。

必要なツールと月額費用

Zapier の料金は米ドル建てです。以下は 1 USD ≒ ¥150 換算での目安であり、為替と税で変動します。

ツールプラン費用(目安)役割
ZapierProfessional(年払い)月 $19.99〜 ≒ ¥3,000 / 750 タスク抽出・分岐・送信の中核
ZapierProfessional(月払い)月 $29.99〜 ≒ ¥4,500 / 750 タスク短期で試す場合
Google WorkspaceBusiness Starter1 ユーザー月 ¥800(年間プラン)台帳・CSV の保管(個人 Google アカウントなら ¥0 も可)
Twilio SMS従量課金1 セグメント $0.089 ≒ ¥13SMS 送信(電話番号の月額費用は別途)
LINE 公式アカウントコミュニケーション¥0 / 月 200 通LINE 送信(友だち追加済みの顧客向け)
LINE 公式アカウントライト¥5,000(税別)/ 月 5,000 通送信数が増えた段階の受け皿
通知手段の月額コスト(送信 300 通/月 想定)
Zapier Professional(年払い)
¥3,000
$19.99 を ¥150/$ で換算
LINE 公式アカウント コミュニケーション
¥0
月 200 通まで無料
LINE 公式アカウント ライト
¥5,000
税別・月 5,000 通
SMS 300 通(Twilio 従量)
¥8,010
1 通 2 セグメント換算 $0.089 × 600

⚠️ SMS の料金は「通数」ではなく「セグメント数」で決まる: Twilio の公式ドキュメントによると、日本語のようにアルファベット以外を含む文(UCS-2 エンコード)は 1 セグメント 70 文字、複数セグメントに分割される場合は 1 セグメントあたり 67 文字です。車検案内の定型文は挨拶・ナンバー・満了日を入れると 70 文字を超えるため、1 通で 2 セグメント分が課金されます。300 通なら 600 セグメント、$0.089 換算で約 ¥8,000 です。逆に、文面を 70 文字以内に収めれば 1 セグメントのままなので、費用は半分で済みます。出典: What is the SMS character limit?(Twilio 公式ドキュメント)

Zapier の無料プランでは、この構成は組めません。公式の料金ページによると Free は 月 100 タスク・2 ステップまでで、Filter と Paths、Webhook が使えず、更新間隔も 15 分です。残日数の判定に Filter が必須なので、Professional 以上が実質的な出発点になります。

⚠️ タスク消費の落とし穴: Zapier の公式ヘルプによると、タスクとして数えられるのは成功したアクションだけで、トリガー・Filter・Paths・Looping のステップ自体は消費しません。ただしループの中や後ろに置いたアクションは、繰り返し 1 回につき 1 タスクを消費します。つまり請求額を決めるのは「読んだ行数」ではなく「送信と書き戻しを実行した回数」です。スプレッドシート側で残日数を数式(満了日 - TODAY())で先に計算し、Zapier には該当行だけを渡す設計にすれば、ループが回る回数そのものを絞れます。編集部の試算では、月 50 台・1 台あたり 3 回(60 / 30 / 7 日前)の案内なら、送信と書き戻しで月およそ 300 タスクとなり、Professional の 750 タスクには収まります。出典: How is task usage measured in Zapier?(Zapier 公式ヘルプ)

送信手段の選択に迷う場合は、SMS の実装詳細を扱った Make.com で Twilio SMS を自動送信するレシピ と、LINE 配信側の設計を扱った スプレッドシートから LINE へ自動通知するレシピ が判断材料になります。次は、実際に台帳をどう設計するかを見ます。

台帳スプレッドシートの列設計

自動化の成否の 8 割は、Zap ではなくこの表の設計で決まります。最低限、次の列を用意してください。

列名用途
顧客名文字列はがき宛名・本文差し込みに使用
郵便番号 / 住所文字列はがき用 CSV の出力対象
携帯番号文字列(先頭 0 を保持)SMS 送信先。表示形式は「書式なしテキスト」に固定
LINE ユーザー ID文字列LINE 送信先。未取得なら空欄
車両ナンバー文字列本人確認と問い合わせ対応に使用
車検満了日日付すべての計算の起点
希望連絡手段SMS / LINE / はがきPaths の分岐条件
残日数数式=満了日 - TODAY()
60日案内済 / 30日案内済 / 7日案内済日付送信ログ。空欄が送信対象の目印
入庫予約日日付入力済みなら以降の案内を停止

💡 携帯番号の先頭 0 は消える: スプレッドシートに 09012345678 を入力すると数値と解釈され、9012345678 に化けます。列全体の表示形式を「書式なしテキスト」に変更してから貼り付けてください。既に化けたデータは =TEXT(A2,"00000000000") で復元できます。SMS が届かない相談の大半はこの 1 点です。

台帳ができたら、いよいよ Zap を組みます。

設定手順(約 90 分)

Zapier × 車検リマインド 設定手順
STEP 1
台帳スプレッドシートを整える
前セクションの列を用意し、「残日数」列に満了日から本日を引く数式を入れる。既存の顧客管理ソフトがある場合は CSV で書き出して貼り付ける。この時点で満了日が空欄の行が何件あるかを必ず数え、空欄のまま自動化に進まない
STEP 2
送信手段のアカウントを準備
SMS を使う場合は Twilio アカウントを作成し、日本向け送信に使える送信元(電話番号または送信者名)を取得する。LINE を使う場合は LINE 公式アカウントを開設し、Messaging API のチャネルアクセストークンを発行する。いずれも事前の審査・申請が必要な項目があるため、実装より先に着手する
STEP 3
Zap のトリガーを毎朝 8:00 に設定
トリガーに Schedule by Zapier の「Every Day」を選び、送信時刻を 8:00 に指定する。土日に送りたくない場合は「Trigger on weekends?」を No にする。営業時間外の SMS は開封率が落ちるうえ苦情の原因になるため、時刻は営業開始直後に寄せる
STEP 4
対象行を検索して絞り込む
アクションに Google Sheets の「Lookup Spreadsheet Rows (Advanced)」を置き、「残日数」列が 60 の行を検索する。名前のよく似た「Lookup Spreadsheet Row」(単数)は該当行を 1 件しか返さないため、同じ日に 60 日前を迎えた車が 3 台あっても 1 台しか案内されず、残りは黙って取りこぼされる。必ず複数行を返せる (Advanced) の側を選ぶこと。続けて Filter by Zapier を挿入し、「60日案内済」列が空欄であること、かつ「入庫予約日」が空欄であることを条件に加える。この二重条件が二重送信と予約済み顧客への無駄打ちを防ぐ
STEP 5
1 行ずつに分けて Paths で分岐
STEP 4 の検索結果は複数行がまとめて 1 件のデータ(ライン アイテム)として返るため、そのまま送信アクションにつなぐと 1 通しか出ません。先に Looping by Zapier の「Create Loop From Line Items」を置き、1 行ずつ処理する形にする。そのうえで Paths by Zapier を追加し、Path A は「希望連絡手段 = SMS」で Twilio の Send SMS、Path B は「希望連絡手段 = LINE」で Webhooks by Zapier の POST により LINE Messaging API の push を呼び出す、Path C は「希望連絡手段 = はがき」で別シート「はがき出力」に Create Spreadsheet Row を実行する
STEP 6
本文に差し込みフィールドを設定
本文テンプレートは「{{顧客名}} 様 {{車両ナンバー}} のお車は {{車検満了日}} が車検満了日です。ご都合の良い日をご返信ください。〇〇自動車」のように、台帳の列を Zapier の差し込み項目として選択する。手打ちではなく必ず項目選択から挿入すること。SMS は 70 文字を超えると 2 セグメント分が課金されるため、差し込み後の想定文字数を実データで数えてから確定する(顧客名や車両ナンバーの長さで超えやすい)。LINE は文字数課金がないので、より丁寧な文面を別途用意してよい
STEP 7
送信ログを台帳へ書き戻す
各 Path の最後に Google Sheets の「Update Spreadsheet Row」を置き、「60日案内済」列に本日の日付を書き込む。ここを省略すると翌日も同じ顧客に送信され続ける。テストは必ず自分の携帯番号 1 件だけを入れた行で行い、書き戻しが起きたことを目視してから本番データに広げる
STEP 8
30 日前・7 日前の Zap を複製して作る
完成した Zap を Duplicate し、検索条件を「残日数 = 30」「残日数 = 7」に、書き戻し先を「30日案内済」「7日案内済」に変更する。7 日前は未予約の顧客に限定するため、Filter に「入庫予約日が空欄」を必ず含める

所要約 90 分。SMS または LINE のアカウント審査・初期設定に最も時間がかかるため、前日までに済ませておくと当日は 60 分で終わります

⚠️ はがきの自動投函までは自動化しない: Zapier から印刷代行サービスへ連携して物理的に投函するところまで自動化すると、住所の誤りや退会済み顧客への発送を止められず、印刷費と郵送費が実損として出ます。「はがき出力」シートに宛名行を貯め、週 1 回だけ人が目視して CSV を書き出す設計にとどめてください。自動化の対象は「リストづくり」であって「投函の意思決定」ではありません。

導入前後の比較(月 50 台規模の想定)

車検案内業務の月間工数(対象 50 台/月の工場を想定)
導入前(手作業)
  • 台帳の目視チェック 月 2 時間
  • 案内リストの手書き 月 1.5 時間
  • はがき宛名の手入力 月 3 時間
  • SMS / LINE の個別送信 月 3 時間
  • 送信済みの管理と重複対応 月 1 時間
  • 合計 約 10.5 時間
導入後(Zapier 運用)
  • 抽出と送信は全自動 0 時間
  • はがき CSV の目視確認 月 1 時間
  • 返信対応と予約入力 月 1.5 時間
  • 台帳のメンテナンス 月 0.5 時間
  • 合計 約 3 時間

編集部のシミュレーション: 月 7.5 時間の削減。時給換算 ¥2,000 なら月 ¥15,000 相当で、Zapier の月額 ¥3,000 台は十分に回収圏内です。実際の削減幅は台帳の整備状況によって大きく変わります。

金額よりも重要なのは、案内の抜けがゼロになることです。車検 1 台の粗利が仮に ¥20,000 なら、月 1 台の取りこぼしを防ぐだけで固定費を上回ります。ただし、この試算はあくまで工数の置き換えを示したものであり、入庫率の向上を約束するものではありません。

編集部の見解: この仕組みの本当の価値は、送信の自動化よりも「送った・送っていない」が台帳に残ることにあります。担当者の記憶に依存していた案内履歴が列として可視化されると、返信率の低い文面や、反応の鈍い顧客層が数字で見えるようになります。まず 3 か月分の送信ログを貯めてから、文面や送信タイミングの改善に着手してください。

つまずきやすい点と対処

症状原因対処
SMS が一部の顧客に届かない携帯番号の先頭 0 が消えている列を「書式なしテキスト」に変更し TEXT 関数で復元
同じ顧客に毎日届く送信ログの書き戻しがない、または Filter 条件が甘いSTEP 7 の Update Spreadsheet Row を必ず入れる
月半ばでタスクが尽きる全行をループで読んでいる残日数列を数式で先に計算し、該当行だけを検索する
LINE が届かない顧客が友だち追加していない、ID 未取得希望連絡手段を SMS にフォールバックさせる Path を用意
満了日が古いまま車検実施後に台帳を更新していない入庫完了時に満了日を 2 年後へ更新する運用を明文化

案内文の作成そのものを効率化したい場合は、Zapier で Google スプレッドシートと Slack をつなぐレシピ の通知設計が参考になります。同じ「予約リマインド」の考え方を歯科医院向けに整理した 歯科医院の予約管理を Zapier で自動化するレシピ も、SMS リマインドの文面設計で流用できます。

よくある質問

Q. 車検証の電子化(電子車検証)が進んでいますが、台帳の作り方は変わりますか。 満了日を台帳で管理するという基本は変わりません。電子車検証では券面の記載が一部変わるため、入庫時に満了日を控える手順を現場で統一しておくことが重要です。

Q. 顧客の携帯番号を SMS 送信に使うのは個人情報保護法上どうですか。 車検案内は既存顧客との取引に付随する利用と整理できる場合が多いものの、取得時に示した利用目的の範囲内かどうかの確認が必要です。プライバシーポリシーの記載と、配信停止の受付方法(返信での停止依頼など)を用意してください。判断に迷う場合は顧問の専門家に確認することを勧めます。

Q. Zapier の代わりに Make.com や n8n でも組めますか。 同じ構成は組めます。日次実行・条件分岐・スプレッドシート更新はいずれのツールにもあります。運送業向けの類似構成は Zapier で運送・配送業務の配車管理を自動化するレシピ にまとめています。

Q. 台帳が紙しかありません。何から始めればよいですか。 まず直近 3 か月に満了日が来る車両だけを表に入力してください。全件入力を目指すと着手できなくなります。3 か月分で動作を確認してから、過去分を月ごとに追加していく順序が現実的です。

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出典・参考情報

※ 本文中の料金は 2026 年 7 月時点の公開情報にもとづく目安です。米ドル建ての料金は 1 USD ≒ ¥150 で換算しており、為替と税制により実額は変動します。最新の条件は各公式サイトでご確認ください。

Mira / AI経営ラボ 編集長

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