Microsoft Copilot Studio で社内問い合わせ対応を自動化 月¥29,985からのノーコード構築
「経費精算の締切はいつ?」「有給の申請方法は?」——総務や情シスに毎日届く同じ質問。Microsoft Copilot Studio を使えば、この社内問い合わせ窓口をプログラミングなしで作れます。公式の料金と課金の仕組みを、中小企業の視点で読み解きました。
- Copilot Studio は、社内向けの質問応答エージェント (AI が自動で応答する仕組み) をノーコード=プログラミングなしで作れる Microsoft のサービスです
- 料金の入り口は3つ。無料の試用版、会社単位の事前購入プラン (月¥29,985 / 25,000 クレジット)、そして使った分だけの従量課金制です
- 課金の単位は「Copilot クレジット」。AI が考えて答える生成回答は1回2クレジット、定型の回答は1クレジットと、公式に明記されています
- Microsoft 365 Copilot のライセンスを持つ社員が Teams などで使う分は、公正利用 (フェアユース) の範囲内でクレジットを消費しない扱いになります
- 買った容量は翌月に繰り越せず、125%に達するとエージェントが停止する仕組みがあるため、消費量の監視設定が実質必須です
編集長の見解
Copilot Studio の本当の価値は「チャットボットが作れること」ではありません。Teams や SharePoint という、社員がすでに毎日開いている場所に窓口を置ける点にあります。新しいアプリを覚えさせる必要がないので、導入時の抵抗が小さい。一方で料金体系はクレジット制で、月額がいくらになるか事前に読みにくいのが最大の弱点です。編集部としては、まず従量課金制か試用版で1つだけ作り、実際の消費量を見てからパック契約を検討する順序を推奨します。
💡 Copilot Studio は何をするサービスか
Copilot Studio は、Microsoft が提供するエージェント (AI が自動で応答・作業する仕組み) の構築ツールです。公式のクイックスタートでは「ガイド付きのコードなしのグラフィカル エクスペリエンス」と説明され、データサイエンティストや開発者は不要だと明記されています。
作り方も独特です。作りたいものを自分の言葉で説明すると、AI がエージェントの名前・説明・指示を生成し、さらに知識ソースやツールまで提案してくれます。説明文は最大 1,024 文字まで入力できます。
- Teams とメールに同じ質問が毎日届く
- 就業規則PDFを開いて該当箇所を探す (1件 5〜10 分)
- 担当者が不在だと回答が翌日になる
- 夜間・休日は誰も答えられない
- 社員が Teams のエージェントに直接質問
- 登録した社内文書から AI が該当箇所を提示
- 24時間・即時に一次回答が返る
- 答えられない質問だけ担当者にエスカレーション
※ 効果は社内文書の整備状況に大きく左右されます。編集部の想定シナリオであり、実測値ではありません。
似たジャンルのツールとしては、オープンソース系のDify の解説記事やBotpress の解説記事も参考になります。Copilot Studio の差別化点は、Microsoft 365 の中に閉じた状態で権限管理まで完結できることです。
次のセクションでは、多くの経営者がつまずく「結局いくらかかるのか」を、公式ページの数値で整理します。
💰 料金は3つの入り口がある
Copilot Studio の料金は、Microsoft 公式の料金ページで3通りの入り口が示されています。日本語版の料金ページに表示されている金額は以下のとおりです。
| 入り口 | 公式表示価格 | 課金の単位 | 向いている会社 |
|---|---|---|---|
| 試用版 (無料) | ¥0 | — | まず触って判断したい会社 |
| 従量課金制 | 使用量に応じて変動 | Azure の契約経由・事前購入なし | 問い合わせ件数が読めない会社 |
| 事前購入プラン | ¥29,985 / 1パック / 月 | 会社 (テナント) 単位・25,000 クレジット | 利用量が安定してきた会社 |
| Microsoft 365 Copilot 経由 | ¥4,497 / 1ユーザー / 月 (年払い) | 社員1人あたり | すでに Copilot を導入済みの会社 |
💡 まず無料で試せます
公式ドキュメントによれば、個人として試用版にサインアップでき、試用期間の終了時にさらに30日間の延長が可能です。試用版が期限切れになった後も、作ったエージェントは90日間動き続けます。ただし試用版ではエージェントを「発行」できません。テストチャットで動作確認するところまでが範囲です。
「テナント」とは、会社ごとに割り当てられた Microsoft のサービス領域のことです。事前購入プランはユーザー数ではなく、この会社単位で課金されます。社員が何人いても1パックは¥29,985です。
次は、その「クレジット」が何をすると何個減るのかを見ていきます。
🧮 Copilot クレジットは何にいくら減るのか
2025年9月1日から、消費の単位はそれまでの「メッセージ」から「Copilot クレジット」に名称変更されました。公式ドキュメントには、機能ごとの消費レートが表で明記されています。
| エージェントの動作 | 消費クレジット | Microsoft 365 Copilot ライセンス保有者 |
|---|---|---|
| 従来型の回答 (作成者が用意した定型返答) | 1 クレジット | 無料 |
| 生成回答 (AI が文脈から作る返答) | 2 クレジット | 無料 |
| エージェント アクション (推論やトピック遷移) | 5 クレジット | 無料 |
| テナント グラフの基盤設定 (社内データ横断検索) | 10 クレジット | 無料 |
| エージェント フロー アクション (100アクションあたり) | 13 クレジット | 無料 |
| コンテンツ処理ツール (1ページあたり) | 8 クレジット | 無料 |
公式ドキュメントは具体的な計算例も示しています。返品ポリシーの質問に定型回答4回、トラブルシューティングに生成回答2回、1日900人の顧客が使う想定で「(4×1)+(2×2) を 900人分で 7,200 Copilot クレジット」という試算です。
編集部の読み解き
右端の列がこの表の要点です。Microsoft 365 Copilot のライセンスを持つ社員が Copilot Chat・Teams・SharePoint でエージェントを使う分は「ゼロレート」、つまりパックやメーターを消費しません。すでに Microsoft 365 Copilot を導入している会社なら、社内向けエージェントの追加費用は実質ゼロになり得ます。導入判断の分かれ目はここです。Microsoft 365 Copilot 側の料金と機能もあわせて確認してください。
ただし公式は脚注で「使用は公正利用 (フェアユース) の制限に制限されています」と明記し、製品の進化に応じて上限を更新する権利を留保しています。無制限に使える約束ではない点は押さえておいてください。
つまり、同じエージェントでも「誰が使うか」で費用が変わる設計です。ここを踏まえたうえで、実際の作り方に進みます。
🛠️ 社内問い合わせエージェントを作る手順
公式クイックスタートの流れに沿って、就業規則や社内規程に答える窓口を作る手順を整理しました。所要時間は、文書が揃っていれば初回でも1〜2時間が目安です (編集部の想定)。
アイコン画像を差し替える場合は、PNG形式・72KB未満・最大192×192ピクセルという公式の制約があります。地味ですが、公開直前に引っかかりやすいポイントです。
作った窓口を、承認や通知の業務につなげたい場合は次のセクションが参考になります。
🔗 Power Platform 連携でできること
Copilot Studio は Power Platform の一員なので、Power Automate のフローや各種コネクタ (外部サービスとの接続部品) と組み合わせられます。「質問に答える」だけでなく「申請を受け付けて回す」ところまで広げられるのが強みです。
ただし、どこまでできるかはライセンス次第で明確に分かれます。公式ドキュメントは、一部の Microsoft 365 サブスクリプションに含まれる「Teams プランの Copilot Studio」と、単体契約の違いを表で示しています。
| 機能 | Teams プラン (一部の M365 に付属) | 単体の Copilot Studio 契約 |
|---|---|---|
| 生成オーケストレーション (AI による動作の自動調整) | 該当なし | 利用可 |
| 公開できる先 | Teams のみ | サポートされる全チャネル |
| Premium コネクタ (外部サービス接続) | 該当なし | 利用可 |
| フロー (自動・即時・定期実行) | Power Automate のフローをトピック内で利用 | Copilot Studio 内でフローを作成 |
| 有人担当者への引き継ぎ | 該当なし | 利用可 |
承認フローそのものを先に作りたい場合は、Power Automate と Teams の承認レシピやSharePoint を使った承認フローが実装の下地になります。フォーム受付から始めるならForms と Teams の連携レシピも参考にしてください。
💡 費用の財布は2つに分かれます
公式ドキュメントは「Power Automate のクラウドフローは Power Automate のライセンスを使用し、Copilot クレジットではありません。Copilot Studio の強制や課金の対象外です」と注記しています。つまり、Copilot Studio 内で管理する「エージェント フロー」はクレジットを消費しますが、従来どおり Power Automate 側で作ったクラウドフローは Power Automate の契約で動きます。既存の自動化資産をそのまま活かせる一方、請求先が2系統に分かれる点は経理面で把握しておきましょう。
連携の幅が広がるほど、次に効いてくるのがコスト管理です。
⚠️ 導入前に知っておくべき落とし穴
⚠️ 買った容量は翌月に繰り越せません
公式ドキュメントは「毎月の購入容量が適用され、未使用の Copilot クレジットは翌月に引き継がれません」と明記しています。25,000クレジットのパックを買って月3,000しか使わなくても、残りは消えます。だからこそ、いきなりパックを買うのではなく、まず消費量を実測する順序が重要です。
⚠️ 容量の125%でエージェントが止まります
公式の強制ポリシーによれば、テナントが前払い容量の125%に達すると強制措置が発動し、カスタムエージェントが無効化されます。進行中の会話は中断されませんが、それ以降の呼び出しは拒否され、利用者には「このエージェントは現在使用できません」と表示されます。管理者にはメール通知が届きます。
💡 上限は事前に設定できます
Power Platform 管理センターの「ライセンス > Copilot Studio > 管理エージェント」から、エージェント単位で月間使用量の上限を設定できます。強制措置が発動する前に消費を止められるため、公開前に設定しておくのが編集部の推奨です。消費レポートも同じ管理センターで確認できます。
もうひとつの注意点は、試用版の位置づけです。試用版では発行ができないため、「社内で本当に使えるか」を数人に試してもらう段階に進むには、有償の契約か Microsoft 365 Copilot のライセンスが必要になります。
📊 編集部のシミュレーション: 社員30名の会社の場合
ここからは編集部のシミュレーションです。実際の請求額を保証するものではなく、公式の課金レートをもとにした試算である点にご注意ください。
前提: 社員30名、総務・人事への社内問い合わせが月800件。1件につき AI が文脈から答える生成回答が平均2回発生すると想定します。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 1件あたりの消費 | 生成回答 2 クレジット × 2回 | 4 クレジット |
| 月間の消費 | 4 クレジット × 800件 | 3,200 クレジット |
| パックの容量に対する割合 | 3,200 ÷ 25,000 | 約 12.8% |
| クレジット単価の目安 | ¥29,985 ÷ 25,000 クレジット | 約 ¥1.2 / クレジット |
| 消費分の理論値 | 3,200 × 約¥1.2 | 約 ¥3,840 相当 |
この試算から読み取れること
月800件程度なら、25,000クレジットのパックは明らかに過剰です。パックは会社単位の定額なので、この規模では¥29,985を払って約12.8%しか使わないことになります。問い合わせ件数が読めないうちは従量課金制、月の消費が2万クレジットを超えて安定してきたらパックへ、という切り替え方が費用面では合理的です。ただし従量課金制の単価は Azure の料金ページに固定額が表示されておらず、料金計算ツールまたは営業窓口での確認が必要です。
なお、社員30名全員に Microsoft 365 Copilot (¥4,497/ユーザー/月) を付与すると月¥134,910となり、社内問い合わせ対応だけを目的とするには割高です。すでに Copilot を導入済みの会社が「ついでにエージェントも」と考える場合に有利な選択肢だと捉えるのが実態に近いでしょう。
❓ よくある質問
Q. プログラミングの知識は本当に不要ですか? 公式には「データ サイエンティストや開発者は必要ありません」と記載されています。ただし、知識ソースとして登録する社内文書の整理と、権限設定の判断は人間の仕事として残ります。
Q. 無料のユーザーライセンスがあると聞きました。 Copilot Studio ユーザーライセンス自体は無料ですが、公式ドキュメントには「このユーザーライセンスを取得するには、Copilot Studio テナント Copilot クレジット パック予約購入サブスクリプションが必要です」と注記されています。実質的には会社としての有償契約が前提です。
Q. 音声での応答もできますか? 可能ですが課金レートが大きく異なります。公式の表では、クラシック音声が1分あたり10クレジット、GenAI Voice が35クレジット、プレミアム GenAI 音声が75クレジットです。テキストの生成回答 (2クレジット) と比べると桁が違うため、まずはテキストから始めるのが無難です。
Q. 他のチャットボット作成ツールとどう違いますか? Microsoft 365 の権限体系の中で完結する点が最大の違いです。社外向けや自由度の高い構成を求めるなら、Dify や Botpress のような選択肢のほうが適する場面もあります。
出典・参考情報
- Copilot Studio 料金プラン (Microsoft 公式・日本語)
- Copilot Studio ライセンス (Microsoft Learn)
- 請求レートと管理 (Microsoft Learn)
- Copilot Studio にアクセスする / 試用版 (Microsoft Learn)
- クイック スタート: エージェントの作成と展開 (Microsoft Learn)
※ 本記事の料金は 2026年7月30日時点で各公式ページに表示されていた金額です。価格および課金レートは変更される場合がありますので、契約前に必ず公式ページでご確認ください。
Mira / AI経営ラボ 編集長
料金プラン
| プラン | 料金 (JPY) | 請求 |
|---|---|---|
| 試用版 (無料・作成とテストのみ、発行は不可) | ¥0 | 月額 |
| Microsoft 365 Copilot 経由 (1ユーザー・年払い) | ¥4,497 | 月額 |
| 事前購入プラン (25,000 Copilot クレジット / 1パック・会社単位) | ¥29,985 | 月額 |
👍 メリット
- 作りたいものを日本語で説明するだけで、AI が名前・指示・知識ソースまで下書きしてくれる
- Teams や SharePoint など、社員が普段開いている場所にそのまま公開できる
- Microsoft 365 Copilot のライセンスを持つ社員の利用は、クレジットを消費しない扱いになる
- 従量課金制なら事前の契約なしに、使った分だけで始められる
👎 デメリット
- 料金の単位が「クレジット」で、実際に月いくらになるかが事前に読みにくい
- 買った容量は月内で使い切りで、余っても翌月に持ち越せない
- 無料の試用版では作成とテストはできるが、社内への公開 (発行) はできない
- Teams だけで使える簡易版は機能が限られ、外部データ接続などは対象外