業務自動化

Power AutomateでSharePoint稟議承認を自動化 決裁待ちを3日から1日に短縮

中小企業の稟議・多段承認業務 (購買稟議・投資決裁・契約稟議など、複数の決裁者を経て承認するプロセスを SharePoint リストで起票管理したい経営企画・総務・情シス担当) の業務自動化レシピ
業種中小企業の稟議・多段承認業務 (購買稟議・投資決裁・契約稟議など、複数の決裁者を経て承認するプロセスを SharePoint リストで起票管理したい経営企画・総務・情シス担当)
ツールPower Automate
難易度★★☆ 中
設定時間約 50 分

課長の承認を待って部長へ ── この「稟議書のバケツリレー」が、担当者の出張や休暇のたびに何日も止まっていませんか。Power Automate の承認 (Approvals) 機能を使うと、SharePoint リストを起票フォームにした稟議を、決裁者を順番にたどる多段承認として自動化できます。本記事は、Microsoft 365 の標準ライセンスの範囲で組める設計レシピを、手順とあわせて編集部がまとめました。

読了時間 約9分 / 設定所要時間 約50分 / 追加月額 ¥0 から (Microsoft 365 Business Basic 以上を契約済みの場合)

編集長の見解 ── 稟議の自動化というと「1人の承認をスピード化する」話に矮小化されがちですが、中小企業で本当に時間がかかっているのは決裁者が複数いる稟議です。SharePoint リストの「項目が作成されたとき」トリガーと承認 (Approvals) はいずれも標準コネクタで、Office 365 系ライセンスに使用権が含まれています[出典]。「承認の開始と待機」を決裁者の数だけ直列につなぐだけで多段承認は組めるため、追加コストゼロ・特別な開発知識も不要で今日から着手できます。まずは購買稟議など1つのフローで試し、慣れてから投資決裁・契約稟議へ横展開する進め方を編集部は推奨します。

なぜ多段承認は平均3日かかるのか

編集部が中小企業の稟議フローでよく聞く「決裁待ち」の内訳を、紙・メールベースの一般的なパターンとして整理しました。

工程目安の所要時間内容
稟議書を作成し課長へ提出半日フォーマット不備の差し戻しも発生
課長が確認するまでの待ち時間半日〜1日出張・会議中は未読のまま放置されやすい
課長承認後、部長へ紙 or メールで転送半日転送を忘れて止まるケースあり
部長が確認するまでの待ち時間半日〜1日決裁者が複数いるほど遅延が積み重なる
合計 (決裁者2名の場合)約2〜3営業日決裁者が3名以上ならさらに延びる

Power Automate で多段承認を組むと、起票と同時に1人目の決裁者へ通知が届き、承認が完了した瞬間に自動で2人目へ引き継がれます。編集部試算では、この待ち時間を1営業日以内まで圧縮できる設計です。ただし決裁者が長期不在の場合は短縮効果が薄れるため、後述する失敗パターンもあわせて確認してください。

続いて、編集部が設計した全体像を ProcessFlow で示します。

完成形のフロー (ProcessFlow)

Power Automate×SharePoint 多段承認フロー自動化レシピ
📋
01
SharePoint リストへ起票
申請者が稟議内容 (件名・金額・理由) を SharePoint リストに新規項目として登録する
📡
02
Power Automate が検知
「項目が作成されたとき」トリガーが起動し、起票内容と申請者情報を取得する
1️⃣
03
課長へ承認依頼
1段階目の「承認の開始と待機」で課長に通知。却下ならここでフローを終了させる
2️⃣
04
部長へ承認依頼
課長承認後、2段階目の「承認の開始と待機」が自動で起動し部長に通知される
📤
05
結果をリストへ書き戻し・通知
最終決裁結果に応じて SharePoint リストの「ステータス」列を更新し、申請者へメールで通知する

SharePoint リストへの起票をトリガーに、Power Automate が決裁者を順番にたどりながら承認を進め、結果をリストへ自動で書き戻す設計

この設計の肝はステップ03と04を直列に配置する点です。課長の承認が完了する前に部長へ回してしまうと決裁の順序が崩れるため、次のセクションで具体的な組み方を手順化します。

次に、ゼロから稼働までの具体的な手順を時系列で示します。

設定手順 (TimelineSteps)

Power Automate×SharePoint 0→稼働まで
0:00 - 0:10
SharePoint リストの準備
SharePoint サイトにリストを新規作成し、「件名」「申請金額」「申請理由」「申請者」「ステータス」(選択肢列: 申請中/課長承認済/決裁完了/却下) の列を用意します。すでに稟議管理用のリストがある場合はそちらに「ステータス」列を追加するだけで流用できます。
0:10 - 0:15
Power Automate でフローを新規作成
make.powerautomate.com にサインインし「自動化したクラウドフロー」を新規作成。トリガーに SharePoint の「項目が作成されたとき」を選び、対象のサイトとリストを指定します[出典]
0:15 - 0:25
1段階目「課長承認」を設定
「承認」コネクタから「承認の開始と待機」を追加します。承認の種類は少額稟議なら「承認/却下 - 最初の1人」、金額の大きい稟議は慎重を期して「承認/却下 - 全員が承認」を選びます[出典]。割り当て先に課長のメールアドレスを指定し、タイトル・詳細に SharePoint 側の件名・金額・理由の値を差し込みます。
0:25 - 0:30
条件分岐で却下を打ち切る
「条件」アクションで課長の応答結果を判定し、「却下」の場合は SharePoint リストのステータスを「却下」に更新して即座にフローを終了させます。「承認」の場合のみ次のアクションへ進む分岐にします。
0:30 - 0:40
2段階目「部長承認」を追加
条件分岐の「はい (承認)」側に、もう1つ「承認の開始と待機」を追加し、割り当て先を部長に変更します。これで課長の承認が完了して初めて部長へ通知が届く直列の多段承認になります。決裁者が3名以上なら同じ手順を繰り返して段数を増やせます。
0:40 - 0:47
最終結果の書き戻しと通知を追加
部長の応答結果でさらに条件分岐し、承認なら SharePoint リストのステータスを「決裁完了」に、却下なら「却下」に更新します。あわせて Outlook の「メールの送信 (V2)」アクションで申請者へ最終結果を通知します。Teams を使っている場合は「チャットまたはチャネルでメッセージを投稿する」に差し替えても構いません。
0:47 - 0:50
テスト起票で動作確認
実際に SharePoint リストへテスト項目を追加し、課長→部長の順で通知が届くか、途中で却下した場合にフローが正しく打ち切られるかを確認して完了です。

Microsoft 365 (SharePoint を含むプラン) を契約済みの担当者を想定した50分手順

ここまでで基本の多段承認フローは稼働します。次に、運用で最もつまずきやすいポイントを、編集部が現場で見てきた失敗パターンとして共有します。

多段承認フロー設計の失敗パターンと対策

失敗パターン①: 却下されても後段の決裁者に回ってしまう ── 条件分岐を入れずに「承認の開始と待機」をただ並べただけだと、課長が却下しても部長へ承認依頼が飛んでしまうケースがあります。各段階の直後に必ず「条件」アクションを挟み、却下ならフローを終了させる (または明示的にステータスを更新して以降のアクションをスキップする) 設計にしてください。

失敗パターン②: 決裁者が長期不在で全体が止まる ── 部長が出張・休暇で長期不在だと、フローはその段で待機し続け、稟議全体が滞留します。重要な稟議には代理決裁者をあらかじめ割り当てておくか、一定時間 (例: 48時間) 応答がなければ代理者へエスカレーションする分岐を組み込むと安心です。30日を超える長期保留の可能性があるなら「承認の作成 (v2)」アクションへの切り替えも検討してください[出典]

Tip: SharePoint リストには標準トリガーがある ── Excel Online (Business) には「行が追加されたら起動」という標準トリガーが存在せず、定期実行で代用する必要がありますが、SharePoint リストには「項目が作成されたとき」という標準トリガーが用意されています[出典]。起票と同時にフローを即座に動かしたい多段承認では、SharePoint リストを起点にする方が素直に組めます。

Tip: 段数が多いなら承認履歴を1列にまとめる ── 決裁者が3名以上になると、リストの列が「課長ステータス」「部長ステータス」「社長ステータス」と増えて煩雑になりがちです。各段階の結果を「承認履歴」という1つのテキスト列に追記していく設計にすると、誰がいつ承認したかを1つのセルで振り返れて運用が楽になります。

多段承認は「途中で確実に止められる設計」と「不在時の代替経路」がそろって初めて安心して任せられます。段数を増やす前に、まず2段階 (課長→部長) の型で確実に動くことを確認してから広げるのが現実的です。

次に、自動化の活用イメージを具体的なシナリオで示します。

中小企業での活用シナリオ

従業員80名の建設資材卸売会社を想定します。10万円を超える購買稟議は課長と部長の二段階承認が必要でしたが、紙の稟議書を手渡しで回していたため、部長が現場出張中だと決裁が1週間近く止まることもありました。

購買稟議 多段承認フローの導入前後
導入前 (紙の稟議書を手渡し)
  • 稟議書を印刷し課長へ手渡し
  • 課長承認後、部長へ改めて転送
  • 部長が出張中だと数日〜1週間滞留
  • 承認履歴は稟議書の押印のみで一覧化できない
導入後 (Power Automate×SharePoint)
  • SharePoint リストに起票するだけで課長へ自動通知
  • 課長承認と同時に部長へ自動で引き継がれる
  • 外出中でもスマホの Teams / メールから承認可能
  • 決裁状況がリストの「ステータス」列で一覧管理できる

決裁までの待ち時間を平均3営業日から1営業日以内に短縮 (編集部試算)

このように、多段承認の自動化は「決裁者を探して回す稟議」から「起票すれば自動で決裁者をたどってくれる稟議」へ運用を変えます。まずは2段階の購買稟議で型を作り、効果を確認したうえで投資決裁や契約稟議のような段数の多いフローへ広げるのが現実的です。最後に、規約・運用面で気をつけるべき点を整理しておきます。

規約・運用上の注意

ライセンスと追加コストの目安

SharePoint リストと承認 (Approvals) はいずれも標準コネクタのため、Microsoft 365 Business Basic (¥1,049/ユーザー/月、年払い・税抜の目安) 以上、または Office 365 E1/E3/E5 などを契約していれば追加ライセンスなしで利用できます[出典]。Microsoft 365 を未契約の場合は、Power Automate 単体プラン (Premium、月額 $15/ユーザー、年払い) の契約が必要です[出典]

プラン月額目安 (年払い・税抜)多段承認に使えるか
Microsoft 365 Business Basic¥1,049/ユーザー使える (標準コネクタの範囲)
Microsoft 365 Business Standard¥3,523/ユーザー使える (SharePoint・Teams も含む)
Power Automate Premium (単体)約$15/ユーザー (≈¥2,325)使える (プレミアムコネクタも利用可)

料金は 2026-07-26 時点の編集部調べ (いずれも税抜) です。為替や価格改定により変動するため、契約前に必ず公式サイトで最新料金をご確認ください。

1日あたりのアクション実行回数の上限

Microsoft 365 ライセンスの利用権でフローを動かす場合、1ユーザーあたり1日6,000アクションという上限があります[出典]。多段承認は1件あたりのアクション数が増えやすいため、想定申請件数×決裁段数を事前に見積もっておくと安心です。

個人情報・機密情報の取り扱い

投資決裁や契約稟議には取引条件や金額など機微な情報が含まれることが多いため、承認通知の本文に詳細を書きすぎず、リンク先の SharePoint リスト側でアクセス権限を絞って確認する運用にすると安全です。社内の情報管理ルールにあわせて設計してください。

規約・運用面の注意点を踏まえたうえで、最後によくある疑問を編集部が整理します。

よくある質問

Q1. 決裁者が4名以上いる場合も組めますか? 組めます。「承認の開始と待機」→条件分岐→次の「承認の開始と待機」という組み合わせを決裁者の数だけ繰り返すだけです。ただし段数が増えるほどフローが縦に長くなるため、5段階を超える場合は保守性を考えて子フロー化 (別フローに切り出して呼び出す) することを編集部は推奨します。

Q2. 課長が休暇中で承認できないとき、自動で部長に回してもらえますか? 標準機能にはありませんが、「承認の開始と待機」に設定した期限 (タイムアウト) を過ぎても応答がない場合に別ルートへ分岐する設計を条件分岐で追加すれば、疑似的な自動エスカレーションを実装できます。

Q3. SharePoint リストではなく Microsoft Forms から起票することもできますか? 可能です。Forms の「新しい応答が送信されるとき」トリガーに差し替え、応答内容を SharePoint リストへ書き込むアクションを追加すれば、起票フォームと決裁状況の一覧管理を両立できます。

Q4. 承認結果を経理システムなど社外のシステムにも連携できますか? Power Automate には多数のコネクタがあるため、決裁完了後のアクションとして外部システムへの連携を追加できます。ただし対象のシステムがプレミアムコネクタ扱いの場合は Power Automate Premium ライセンスが別途必要になる点にご注意ください。

出典・参考情報

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Mira / AI経営ラボ 編集長 本記事は 2026-07-26 時点の情報です。料金・機能は各社公式情報を最新でご確認ください。

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