業務自動化

Power AutomateでExcel申請の承認を自動化 中小企業の稟議を3日→1日

中小企業の社内申請業務 (購買申請・経費精算・稟議・休暇申請など、Excel の申請書や台帳で管理している承認業務) の業務自動化レシピ
業種中小企業の社内申請業務 (購買申請・経費精算・稟議・休暇申請など、Excel の申請書や台帳で管理している承認業務)
ツールPower Automate
難易度★★☆ 中
設定時間約 50 分

申請書は Excel のまま残したい。でも承認だけは早く回したい。この「Excel は捨てられないが待ち時間は減らしたい」という中小企業の要望に、Power Automate はきれいに答えられます。本記事では、OneDrive 上の Excel 申請台帳を起点に上長承認までを自動化する設計を、落とし穴つきで編集部がまとめました。

読了時間 約9分 / 設定所要時間 約50分 / 追加月額 ¥0 から (Microsoft 365 / Office 365 の対象プランを契約済みの場合)

編集長の見解 ── 承認フロー自動化の記事は「まず Excel をやめましょう」から始まりがちですが、編集部はその前提に懐疑的です。現場が10年使ってきた申請書のフォーマットを捨てさせるコストは、想像より高くつきます。Power Automate の承認 (Approvals) は標準コネクタ ── 追加課金なしで使える基本コネクタ群 ── に分類され、Office 365 系ライセンスに使用権が含まれています[出典]。Excel Online (Business) も同じく標準コネクタです[出典]。つまり申請書は Excel のまま、承認の往復だけを自動化するという折衷案が、追加コストゼロで成立します。まずはここから始めて、現場が慣れてからフォーム化を検討する順序を推奨します。

Excel 申請の承認に2〜3営業日かかる構造的な理由

編集部が中小企業の購買申請・稟議でよく見る滞留の内訳を、一般的な手作業パターンとして整理しました。

工程目安の所要時間滞留が起きる理由
申請者が Excel 申請書に記入し、メール添付で送付30分〜半日最新版のフォーマットがどれか分からず探す時間が発生
上長がメールに気づくまでの待機半日〜1.5日添付ファイルは開くまで内容が分からず、後回しにされやすい
「見ていただけましたか」の催促都度10〜15分電話・チャットでの個別催促が申請者側の負担になる
承認後、台帳 Excel への転記15〜30分総務・経理が手作業で集計ブックに書き写す
合計約2〜3営業日

注目すべきは、待ち時間の大半が「作業時間」ではなく「気づかれない時間」だという点です。承認者が悪いのではなく、メール添付という伝達手段が承認の優先度を伝えられないことが原因です。

Power Automate で組むと、申請行が追加された時点で承認依頼が承認者の手元に届き、承認結果は Excel の同じ行に自動で書き戻されます。転記工程そのものが消えます。

次のセクションでは、編集部が設計した全体像を ProcessFlow で示します。

完成形のフロー (ProcessFlow)

Excel 申請台帳 × Power Automate 承認レシピ
📗
01
Excel 申請台帳に行を追加
申請者が OneDrive 上の共有ブックに1行記入する。ステータス列は空のまま
⏱️
02
定期実行トリガーが起動
15分ごとなど任意の間隔で「繰り返し」トリガーがフローを起動する
🔍
03
未処理の行だけを抽出
「テーブルに存在する行を一覧表示する」でステータスが未処理の行だけ取得する
04
承認依頼を送る
「開始して承認を待機」で承認タイプと上長を指定し、回答を待つ
📥
05
上長が承認・却下
Outlook のメール、Teams のカード、操作センターのいずれからでも回答できる
🔄
06
Excel に結果を書き戻す
「行を更新する」でステータス・承認者・承認日時を同じ行に記録し、申請者へ通知

OneDrive 上の Excel 申請台帳を定期実行で監視し、未処理の申請行を見つけたら承認依頼を送り、結果を同じ行に書き戻す設計

この設計の肝はステップ 02 と 03 です。Excel 側にトリガーが無いという制約を、定期実行とステータス列の組み合わせで回避しています。次のセクションで具体的な手順に落とし込みます。

続いて、ゼロから稼働までを時系列で示します。

設定手順 (TimelineSteps)

以下のアクション名は日本語版 Power Automate の表記に合わせています。画面の版によって言い回しが少し変わることがあるため、英語名も併記しました。

Excel 承認フロー 0→稼働まで
0:00 - 0:12
Excel 申請台帳をテーブル化する
申請ブックを OneDrive for Business または SharePoint に置きます。申請データの範囲を選び「テーブルとして書式設定」でテーブル化してください[出典]。列は「申請ID」「申請者」「金額」「内容」「ステータス」「承認者」「承認日時」の7つを最低限そろえます。申請IDは行を一意に特定するキー列になるため、重複しない値にしてください。
0:12 - 0:18
フローを新規作成し定期実行トリガーを置く
make.powerautomate.com にサインインし「スケジュール済みクラウド フロー」を新規作成します。トリガーは「繰り返し (Recurrence)」です。間隔は15分〜1時間が目安で、短くするほど反応は速くなりますが、1日あたりのアクション数を多く消費します。
0:18 - 0:28
未処理の申請行を取得する
Excel Online (Business) の「テーブルに存在する行を一覧表示する (List rows present in a table)」を追加し、ロケーション・ドキュメント ライブラリ・ファイル・テーブルを選びます。「フィルター クエリ」でステータス列が未処理の行だけに絞り込みます。既定では最大256行までしか返らないため、台帳が大きい場合は設定の「改ページ (ページネーション)」を有効にしてください[出典]
0:28 - 0:38
「開始して承認を待機」を設定する
取得した行を「それぞれに適用する (Apply to each)」で回し、その中に承認コネクタの「開始して承認を待機 (Start and wait for an approval)」を追加します。承認の種類は、少額の購買申請なら「承認/拒否 - 最初に応答」、金額の大きい稟議なら「承認/拒否 - 全員の承認が必須」や「順次承認」を選びます[出典]。タイトルと詳細には、申請ID・申請者・金額・内容を差し込んでおきます。
0:38 - 0:45
承認結果を Excel に書き戻す
「条件」で承認結果を判定し、それぞれの分岐に Excel Online (Business) の「行を更新する (Update a row)」を追加します。キー列に申請ID、キー値にその行の申請IDを指定し、ステータス・承認者・承認日時を上書きします。キー列名は大文字と小文字を区別するため、Excel 上の見出しと一字一句そろえてください[出典]
0:45 - 0:48
申請者への結果通知を追加する
同じ分岐に Outlook の「メールの送信 (V2)」を置き、申請者へ承認・拒否の結果とコメントを通知します。Teams を使っている場合は「チャットまたはチャネルでメッセージを投稿する」に差し替えても構いません。
0:48 - 0:50
テスト申請で動作確認する
台帳に1行テスト申請を書き、次の定期実行で承認依頼が届くか、承認後にステータスが書き戻されるかを確認します。書き戻しは反映まで最大30秒程度かかることがあります[出典]

Microsoft 365 / Office 365 の対象プランを契約済みの担当者を想定した約50分の手順

ここまでで基本形は稼働します。ただし Excel コネクタには独特のクセがあり、知らずに組むと本番で止まります。次のセクションで先回りして潰します。

次に、編集部が特に注意すべきと考える制約と失敗パターンを整理します。

Excel Online (Business) の落とし穴と対策

失敗パターン①: 「行が追加されたら」トリガーを探して詰まる ── Excel Online (Business) コネクタが提供しているのはアクションのみで、トリガーは用意されていません[出典]。SharePoint リストのような「項目が作成されたとき」に相当する起動条件は存在しないため、本記事のように定期実行トリガーとステータス列で「未処理の行を拾う」設計にするのが定石です。即時性がどうしても必要な場合は、申請の入口だけ Microsoft Forms に置き換え、Excel は集計先として使う構成に切り替えてください。

失敗パターン②: 誰かがブックを開いたまま更新が失敗する ── Excel Online (Business) は、デスクトップ版 Excel やほかのフローからの同時書き込みを想定していません。複数のクライアントから1つのブックへ同時に書き込むと、競合やデータ不整合が起きる可能性があると明記されています[出典]。台帳ブックは「人は追記のみ、更新はフローのみ」という役割分担を決め、承認結果の列は手で触らない運用ルールにしてください。読み取り専用のブックに対しては書き込みが失敗する点にも注意が必要です。

主な制限は次のとおりです。中小企業の申請規模であれば大半は余裕がありますが、事前に把握しておくと設計判断が速くなります。

制限項目内容中小企業での実務的な影響
トリガー提供なし (アクションのみ)定期実行での監視が前提。即時通知は不可
ブックの最大サイズ25 MB年度ごとに台帳を分割すれば通常は問題なし
行の一覧取得既定で最大256行ページネーションを有効にして回避
行の更新・削除キー値が複数一致した場合は最初の1行のみ更新申請IDを必ず一意にする設計が必須
反映の遅延追加・更新・削除は最大30秒程度の遅延テスト時に「反映されない」と誤解しない
ファイルのロックコネクタ使用後、最大6分間ロックされる場合がある更新の直後に別フローから触らない設計に
接続あたりの呼び出し60秒あたり100回申請件数が多い日は間隔を空ける設計に

いずれも公式のコネクタ リファレンスに記載された仕様です[出典]。特に「キー値が重複すると最初の1行しか更新されない」は、申請IDを日付だけにしてしまった現場でよく起きる事故です。

次に、多くの経営者が最初に気にするライセンスと費用の話に移ります。

ライセンス要件と追加コスト

承認 (Approvals) コネクタは標準コネクタに分類されており、Power Automate と標準コネクタの利用権を与えるライセンスがあれば承認フローを作成できます[出典]。Excel Online (Business) も Power Automate では標準コネクタです[出典]。つまり本レシピは、標準コネクタだけで完結します。

ライセンス本レシピが使えるか1ユーザー1日あたりのアクション上限
Microsoft 365 Business Basic / Standard / Premium使える (標準コネクタの範囲)6,000
Office 365 E1 / E3 / E5 / F3使える (標準コネクタの範囲)6,000
Power Automate Premium (単体)使える (プレミアムコネクタも利用可)40,000
Microsoft 365 / Office 365 を未契約実質的に不可 (Excel の置き場所を確保できない)

公式 FAQ の一覧では、上の1行目は旧称の「Office 365 Business Basic / Business Standard / Business Premium」として記載されています[出典]。現在販売されている「Microsoft 365 Business ○○」と同系列のプランですが、プラン名と付与される権利は改定されることがあるため、契約前に必ず公式のライセンスガイドと最新の FAQ でご確認ください

Office 365 系ライセンスに含まれるのは「自動化・スケジュール実行・ボタンフローの作成と実行」「標準コネクタへのアクセス」「1日6,000アクション」までで、プレミアムコネクタ・パソコン操作の自動化 (RPA)・AI Builder は含まれません[出典]。本レシピはこの範囲に完全に収まります。

なお最終行は「Power Automate 自体が使えない」という意味ではありません。無料プランでもフローは作れますが、Excel Online (Business) が扱えるのは OneDrive for Business や SharePoint 上のブックに限られるため、その置き場所を持つ Microsoft 365 / Office 365 の契約が事実上の前提になります[出典]

Tip: 追加費用は原則 ¥0、必要になるのは例外のときだけ ── Microsoft 365 / Office 365 の対象プランを契約済みなら追加ライセンスは不要です。追加費用が発生するのは、kintone や Salesforce といったプレミアムコネクタ (別料金の上位コネクタ) を組み込む場合や、1日のアクション上限を超える場合です。その際は Power Automate Premium (公式表示価格 $15.00 / ユーザー / 月、年払い) の契約が必要になります[出典]。公式ページにも「表示価格は参考であり実際の価格と異なる場合がある」旨の注記があるため、契約前に必ず最新の見積もりをご確認ください。

Tip: アクション数は「間隔 × 申請件数」で先に見積もる ── 15分間隔の定期実行は1日96回起動します。1回の起動で使うアクションが5個なら1日480アクション、申請の処理分を足しても6,000には遠く届きません。ただし注意点が2つあります。ループの中のアクションは申請1件ごとに1回ずつカウントされるため、繁忙期の件数で見積もること。そして全社の申請を1本のフローに集約したり、5分間隔まで詰めたりすると一気に上限へ近づくことです。上限は所有者のライセンス単位で判定され、ユーザー間で合算されない点も押さえておいてください[出典]

なお承認の履歴は、Microsoft のデータ保管基盤である Dataverse に保存されます。既定の環境で使う場合はこのデータベースが自動的に作成されるため管理者権限は不要ですが、初回実行だけ数分の遅延が起きることがあります[出典]

次に、実際の中小企業でどう変わるかを具体的なシナリオで示します。

中小企業での活用シナリオ

従業員45名の金属加工メーカーを想定します。工具・消耗品の購買申請は長年 Excel の申請書で運用してきました。現場が申請書をメールで工場長へ送り、工場長が承認したら総務が購買台帳へ転記する流れです。工場長は現場を回っていることが多く、承認が翌々日になるのが常態化していました。

購買申請 承認フローの導入前後 (編集部シミュレーション)
導入前 (Excel 申請書 + メール)
  • 申請書を Excel で作成しメール添付で送付
  • 工場長が開くまで平均1〜2営業日待機
  • 承認済みメールを総務が探して台帳へ転記
  • 「あの申請どうなりました」の催促が日常
導入後 (Excel 台帳 × Power Automate)
  • 共有ブックの台帳に1行書くだけで申請完了
  • 15分以内に工場長のメール・Teams へ承認依頼
  • 承認と同時にステータスが台帳へ自動反映
  • 台帳を見れば全申請の状態が一目で分かる

申請から承認完了までを約2〜3営業日から当日〜翌営業日に短縮 (編集部試算)

この構成の価値は、時間短縮そのものより「今どこで止まっているか」が台帳を見れば分かる点にあります。催促の電話は、状況が見えないから発生します。ステータス列が常に最新であれば、催促という作業自体が不要になります。

導入順序としては、購買申請のように件数が多く金額の小さい申請から始めるのが現実的です。型ができてからフローを複製し、稟議や休暇申請へ横展開してください。

最後に、運用で問い合わせの多い点を整理します。

よくある質問

Q1. 申請者にも Power Automate のライセンスは必要ですか? 定期実行のフローは所有者 (作成者) のライセンスで動くため、ライセンスの上限判定も所有者を基準に行われます。申請者は Excel に行を書くだけなので、Excel を使える Microsoft 365 ライセンスがあれば足ります。承認依頼に回答するだけの承認者に上位ライセンスは不要で、メール・Teams・操作センターのいずれかで回答できます[出典]

Q2. 社外の協力会社にも承認を依頼できますか? 社外の方を Microsoft Entra (Microsoft の ID 管理基盤) のゲストユーザーとして招待済みであれば依頼できます。ただし招待を承諾していないゲストは承認者一覧から除外されるほか、自社の契約全体 (テナント) の設定によっては割り当てできない場合があります[出典]。事前に社内の IT 管理者へ確認してください。

Q3. Google スプレッドシートでも同じことはできますか? できます。Google Sheets コネクタも Power Automate では標準コネクタに分類されており、追加ライセンスなしで利用できます[出典]。ただしこちらもトリガーは提供されておらず、行取得の既定値が256行までである点は Excel 版と同じです。共有ドライブ上のファイルはファイル選択画面に表示されない、共有スプレッドシートは ID を直接指定する必要があるなど別のクセもあるため、事前に確認してください[出典]

Q4. 定期実行の間隔はどれくらいが適切ですか? 編集部の目安は15分〜30分です。5分未満に詰めても、承認者がすぐ反応するとは限らないため体感差はほとんど出ません。逆に1日1回まで広げると、緊急の申請を拾えず現場が元のメール運用に戻る原因になります。

Q5. 承認依頼に反応がない場合、催促の仕組みはありますか? 標準機能に自動催促はありません。「遅延」アクションと組み合わせ、一定時間応答がなければリマインドメールを送る分岐を追加すると疑似的なリマインダーになります。長期間保留になり得る申請では、回答を待たずに先へ進む「承認を作成 (Create an approval)」と「承認を待機 (Wait for an approval)」を分けて使う設計も検討してください[出典]

出典・参考情報

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Mira / AI経営ラボ 編集長 本記事は 2026-07-23 時点の情報です。料金・機能・仕様は各社公式情報を最新でご確認ください。

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