Make.com で不動産仲介の物件問合せを自動化する完全レシピ — 反響対応を 24 時間化する
業種: 不動産仲介
使用ツール: Make.com
難易度: ★★☆ 中
所要時間: 約 120 分
不動産仲介業の反響対応は「速さ」で勝敗が決まります。SUUMO・HOME’S・at home から夜間や週末に届く問合せを翌営業日まで放置していませんか。Make.com のシナリオ自動化で、24 時間 365 日「10 秒以内の自動一次返信 + 担当者への即時通知 + アポ取得導線」までを構築する設計図を、公式仕様に沿って具体的に解説します。
- 反響メールを Make.com で受信 → 解析 → 自動返信 → Slack/LINE 通知までを 1 シナリオで完結
- 初期費用ほぼゼロ、月額 $9 (Core プラン) から開始可能、5 名規模なら $16 (Pro) でも十分
- Zapier との違いは「シナリオの視覚的編集」「クレジット課金 (旧オペレーション) で実行回数を読みやすい」「HTTP モジュールで自社 API と柔軟連携」
- 反響からアポ取得までの所要時間を 4 時間 → 30 秒に短縮、機会損失防止が最大の効果
編集長の見解 (Mira): 不動産仲介における「反響対応スピード」は、もはや営業スキルではなく「インフラ整備の問題」です。夜間・休日に届く問合せこそ、競合に先を越されない唯一の差別化点。Make.com は Zapier と比べて視覚的編集と料金体系が日本の小規模仲介事業者に向いており、月 1 万円未満で「実質的に 24 時間営業」を実現できます。導入のハードルは「メールパーサーの初期チューニング」だけです。
このレシピで解決する課題
不動産仲介業 (賃貸・売買) では、以下の問合せ対応プロセスが手作業のまま放置されがちです:
- 夜間・週末の問合せ放置: SUUMO/HOME’S/at home の問合せは 18-23 時に集中するが、営業時間外で対応できず翌営業日に持ち越し
- 一次返信の遅延: 翌営業日朝の対応では既に他社とコンタクト済み = 機会損失
- 担当者の取りこぼし: メールが個人受信箱に埋もれて見逃し
- 顧客情報の手入力: 物件 ID・希望条件・連絡先を都度 CRM にコピペ
- アポ取得連絡の遅さ: 「内見予約のご希望日時を伺います」までが 1-2 日後
業界レポートでも、初回反応速度と成約率の関係は繰り返し指摘されています。一例として、業界向けメディアでは「反響後 10 分以内に電話対応する会社ほど、その後の面談率・来店率・案内率が高い」傾向が紹介されており、初回対応のスピードが鍵だとされます (参考: 全日ラビー不動産コラム)。
つまり、夜 22 時の問合せに翌朝 9 時で返信する運用は、構造的に成約率を取りこぼしている状態です。
なぜ Make.com を選ぶか
Make.com 公式 は欧州発のノーコード自動化プラットフォームで、Zapier と並ぶ二大ツールの一角です。当編集部が Make.com を不動産仲介向けに推奨する理由:
| 比較軸 | Make.com | Zapier |
|---|---|---|
| 編集 UI | シナリオを視覚的にドラッグで構築 | 直線的なステップ列 |
| 課金単位 | クレジット (旧称オペレーション、モジュール 1 実行 = 1 クレジット) | タスク (1 ステップ = 1 task) |
| 最安有料プラン | Core $9/月 (10,000 クレジット) | Professional $19.99/月〜 |
| 分岐・ループ | Router・Iterator が標準 | Filter / Path (やや高プラン要) |
| HTTP / Webhook | フリープランから利用可能 | 一部高プラン |
料金は Make.com 公式 Pricing ページ を確認してください。本記事執筆時点 (2026 年 5 月) では Free $0 / Core $9 / Pro $16 / Teams $29 (各 10,000 クレジット/月、Free は 1,000 クレジット/月) という構成です。なお Make.com は 2025 年 8 月に課金単位の名称を「オペレーション」から「クレジット」へ変更しており、1 オペレーション = 1 クレジットの 1:1 換算です (公式: Credits)。料金は改定の可能性があるため、契約前に必ず公式で確認してください。
不動産仲介の反響対応シナリオ (1 件あたり 5-10 クレジット) なら、月 1,000 件の問合せでも Core プラン枠内で収まる計算です。
完成形 (フロー図)
問合せ受信 10 秒以内に自動返信 + 担当者通知 + CRM 登録までを 1 シナリオで完結
必要なツールとコスト
| ツール | プラン | 月額目安 |
|---|---|---|
| Make.com | Core (10,000 クレジット/月) | $9 (約 ¥1,400) |
| Google Workspace | Business Starter | ¥850 |
| Slack | Free | ¥0 |
| LINE 公式アカウント | フリープラン (200 通/月) | ¥0 |
| Google Calendar | (Workspace に同梱) | ¥0 |
| 予約フォーム (TimeRex / Spir 等) | フリープラン | ¥0 |
合計目安: 月 ¥2,250 程度。月問合せ 100-300 件規模の小規模仲介事業者ならこの範囲で運用可能です。Slack や LINE は無料枠で開始し、規模拡大時にアップグレードする方針で十分です。
設定手順 (約 120 分)
Step 1: Make.com アカウント作成と接続準備 (10 分)
- Make.com 公式サイト からサインアップ (Free プランで開始可)
- ダッシュボードで「Create a new scenario」をクリック
- 後の手順で使う Gmail / Slack / LINE / Google Calendar / Google Sheets を Make の「Connections」から OAuth 認証で接続
Step 2: 顧客情報を貯める Google Sheets を準備 (10 分)
シンプルに始めたい場合、CRM の代わりに Google Sheets を使います (後で Airtable や Salesforce 等に移行可)。シートに以下のカラムを用意:
- 受付日時
- ソース (SUUMO / HOME’S / at home / 自社)
- 物件 ID
- 顧客名
- メール
- 電話
- 希望条件
- 担当者
- ステータス (受付 / 返信済 / アポ取得 / 内見予約 / 失注)
- 次のアクション
- 次のアクション期日
Step 3: シナリオ #1 — 反響受信 → 解析 → 自動返信 (40 分)
Make.com で以下のモジュールを順に配置します。
[Trigger]
Gmail > Watch Emails
folder: INBOX
filter: from:suumo.jp OR from:homes.co.jp OR from:athome.co.jp OR label:自社問合せ
Maximum: 10 (1 回の起動で最大 10 件処理)
[Module 2]
Tools > Set multiple variables
本文プレーンテキスト化、ヘッダから送信元判定
[Module 3]
Text parser > Match pattern (正規表現)
物件 ID / 顧客名 / 連絡先 / 希望条件 を本文から抽出
SUUMO は「物件番号: NC...」形式、HOME'S は別パターン等
[Module 4]
Google Sheets > Add a row
Step 2 で作成したシートに新規行追加 (ステータス: 受付)
[Module 5]
Gmail > Send an email
To: 顧客のメールアドレス
From: 担当者の Workspace アドレス
Subject: 「【○○不動産】お問合せありがとうございます (物件○○)」
Body: テンプレに変数差し込み (顧客名 / 物件名 / 担当者 / 内見予約フォーム URL)
スケジュール設定: トリガーは「Immediately (Gmail Watch Emails で利用可)」または「最短 1 分間隔」に設定。Make.com のスケジュール仕様は 公式ヘルプ 記載のとおりプラン依存です。
Step 4: シナリオ #1 に Slack / LINE 通知を追加 (15 分)
シナリオ #1 の最後に Router を挿入し、2 系統に分岐させます:
[Router]
├─ Branch A: Slack > Create a Message
│ Channel: #反響-受信
│ Text: "🏠 新規問合せ
│ 顧客: ${顧客名} (${電話})
│ 物件: ${物件ID} ${物件名}
│ ソース: ${ソース}
│ 希望: ${希望条件}
│ [Sheets で見る](${シート URL})"
│
└─ Branch B: LINE Messaging API > Push Message (担当者個別 LINE)
To: ${担当者の LINE userId}
Text: 上記と同様の内容
LINE への通知は LINE 公式アカウント (Messaging API) を使う想定です。なお LINE Notify は 2025 年 3 月 31 日をもって提供終了済のため、本記事では Messaging API 利用を前提とします (公式: LINE Developers)。
Step 5: シナリオ #2 — アポ取得 → Google Calendar 自動登録 (25 分)
顧客が自動返信メール内の予約フォーム (TimeRex / Spir / Calendly 等) で内見希望日時を選択 → Webhook が Make.com を起動 → Google Calendar に予定登録 → 顧客と担当者にメール通知、というシナリオ:
[Trigger]
Webhooks > Custom webhook
予約フォーム側で Webhook URL を設定
[Module 2]
Google Sheets > Search rows
顧客メールアドレスから既存行を検索 (シナリオ #1 で登録済の行)
[Module 3]
Google Sheets > Update a row
ステータス: アポ取得 / 次のアクション: 内見
[Module 4]
Google Calendar > Create an event
Calendar: 担当者カレンダー
Title: ${顧客名} ${物件名} 内見
Start / End: 予約フォームから受け取った日時
[Module 5]
Gmail > Send an email
顧客に「内見予約確定」メール (住所、Google Maps、担当者連絡先)
[Module 6]
Slack > Create a Message
"✅ アポ取得: ${顧客名} ${物件名} ${日時}"
Step 6: シナリオ #3 — 内見前日リマインダー (15 分)
[Trigger]
Schedule > Every day at 18:00
[Module 2]
Google Sheets > Search rows
フィルタ: ステータス = アポ取得 AND 内見日 = 翌日
[Module 3]
Iterator (検索結果を 1 件ずつ処理)
[Module 4]
Gmail > Send an email
顧客にリマインドメール
[Module 5]
Slack > Create a Message
担当者に「明日 ${時刻} ${顧客名} 内見」通知
Step 7: シナリオ #4 — 内見後フォロー & 反応薄追客 (15 分)
内見当日の夜にお礼メール、3 日後に感想を伺うメール、30 日経過しても進展のない案件を担当者に Slack で通知する 3 段構成:
[Trigger]
Schedule > Every day at 19:00
[Module 2-A]
内見当日の案件: ステータス → 内見済 + お礼メール送信
[Module 2-B]
内見から 3 日経過 + 進展なし: 感想伺いメール送信
[Module 2-C]
最終接触から 30 日経過 + 失注/成約以外: 担当者に Slack 通知
"⏰ 田中様 (○○マンション) 最終接触 30 日経過"
編集部によるシミュレーション (期待効果の試算)
以下は 編集部による試算 です。実際の効果は事務所の物件構成 (賃貸 / 売買比率)・担当者経験・地域市況により変動します。 業界知見: 不動産業界では「初回返信スピードが成約率に直結」する特性が複数の業界レポートで指摘されています (全日ラビー: 反響成約率を向上させる方法)。
前提: 担当者 3 名、月問合せ 200 件 (SUUMO/HOME’S/at home 経由)、平均仲介手数料 ¥150,000、現状成約率 10% (業界平均近辺) と想定:
- 夜間・休日の一次返信: 翌営業日 (10-15 時間後)
- 担当者の取りこぼし: 月 5-10 件
- CRM 入力工数: 月 12 時間
- アポ取得までの平均時間: 24-48 時間
- 夜間・休日の一次返信: 10 秒 (24/7)
- 担当者の取りこぼし: 月 0-1 件 (Slack/LINE 即時通知)
- CRM 入力工数: 月 2 時間 (自動登録)
- アポ取得までの平均時間: 30 分 - 数時間
月 ¥2,250 投資 → 機会損失防止 + 担当者の事務時間削減 + 反響→成約までのリードタイム短縮
費用感の整理:
- 月コスト: Make.com Core $9 + Google Workspace ¥850 = 約 ¥2,250
- 削減: 月 10 時間の事務作業 (時給換算 ¥2,000 で月 ¥20,000)
- 機会損失防止: 取りこぼし 5 件削減 × 成約率 10% × 仲介手数料 ¥150,000 = 期待値 ¥75,000/月
実数値は事業者の規模・運用次第ですが、月 1 件の取りこぼし防止だけでも初期コストを 60 倍以上回収する構造です。
失敗パターン
失敗 1: メールパーサーが物件 ID を抽出できない — SUUMO/HOME’S/at home の問合せメール本文フォーマットは予告なく変わります。シナリオ #1 で「Text parser > Match pattern」が空を返した場合に備え、別 Router 分岐で「パース失敗 → Slack に原文転送 + 手動対応依頼」を必ず仕込んでください。失敗を放置すると逆にシステム化前より対応漏れが増えます。
失敗 2: 自動返信メールが「いかにもテンプレ」 — 顧客名・物件名・希望条件を本文に差し込まないと逆効果です。可能なら Make.com の Anthropic Claude モジュール (公式統合) を経由し、希望条件に応じた一文を生成して挿入することを推奨します。なお Make.com には OpenAI / Anthropic Claude / Gemini 等の AI モジュールが用意されています (Make Integrations 一覧参照)。
失敗 3: 重要連絡まで自動化してしまう — 価格交渉・契約変更・引渡条件などは必ず人間判断に戻してください。自動メールの末尾に「重要なご相談はお電話 (○○-○○○○-○○○○) にて承ります」を必ず明記し、自動応答の限界を明示することが宅建業者としての信頼維持に直結します。
注意点 (法務・規約面)
- 個人情報保護法: 顧客の連絡先・希望条件は個人情報。Make.com は EU/US データセンター運用のため、利用規約・プライバシーポリシー上で「外部サービス利用」を明記してください
- 宅建業法: 自動返信メールでも「免許番号・商号・代表者名」の表示義務 (省令第 15 条等) を満たすテンプレを用意
- 電気通信事業法 (特商法): 営業メールには配信停止導線が必要
- SUUMO/HOME’S/at home の利用規約: 各ポータルからの問合せメールを自動転送・解析することについて、各社の加盟店契約・規約に抵触しないか確認してください (一般的な反響対応用途は問題ない範囲ですが、契約条件は事業者ごとに異なります)
- LINE 公式アカウント: Messaging API 経由の Push Message は月内通数制限 (フリープラン 200 通) に注意
トラブルシューティング
Q: シナリオが Make.com のクレジット上限を消費しすぎる
A: ダッシュボードで「Scenario history」を確認し、不要な検索ループや無駄な Iterator を削減。Watch Emails の「Maximum」を 10 → 5 に絞るのも有効。
Q: Slack / LINE 通知が遅延する
A: Make.com は基本的にトリガーから数秒〜十数秒で実行されます。長時間遅延する場合はトリガーが「Immediately」ではなく「Schedule (15 分間隔)」になっている可能性。Free プランは Immediately が一部制限される場合があるため、Core 以上にアップグレードを検討。
Q: パースに失敗するメールが多い
A: ポータル毎に正規表現を分けず、1 シナリオで Router 分岐させると保守が大変。ポータル別にシナリオを分け (SUUMO 用 / HOME’S 用 / at home 用)、各々を独立メンテにすると安定します。
まとめ
不動産仲介の反響対応は、月 ¥2,250 程度の投資で 24 時間 365 日の即時返信体制に変えられます。Make.com の特徴 (視覚的シナリオ・オペレーション課金・豊富な統合) を活かせば、5 名規模の事務所でも 2 時間で初期構築が可能です。
最大の効果は「夜間 22 時の問合せに 22 時 0 分 10 秒で自動返信できる」こと。これだけで競合との差別化が成立し、月数件の取りこぼし防止 = 数十万円の機会損失防止につながります。
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出典・参考情報
- Make.com 公式サイト
- Make.com Pricing 公式
- Make.com Credits (旧 Operations) ヘルプ
- Make.com シナリオスケジューリング 公式ヘルプ
- Make.com Integrations 一覧
- LINE Developers (Messaging API)
- LINE Notify サービス終了 公式告知
- SUUMO 公式
- LIFULL HOME’S Business 仲介・管理向け情報
- 全日ラビー: 不動産業界で反響成約率を向上させる方法
Mira / AI経営ラボ 編集長
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