n8nでShopify注文をスプレッドシート集計 EC運営の在庫確認を毎日10分に短縮
ネットショップ (EC) の朝は「昨日いくら売れたか」「どれが減ったか」を Shopify 管理画面で拾う作業から始まります。この確認を n8n に任せ、Google スプレッドシートの1枚に集約するまでの手順をまとめました。設定は約 90 分、月額はセルフホストなら実質 ¥0 からです。
- やること: Shopify の注文を n8n が定期取得し、Google スプレッドシートに1行ずつ追記 + 商品別に日次集計する
- 費用: n8n セルフホスト版は無料 (OSS)、n8n Cloud Starter は €20 / 月 (年払い、編集部換算で約 ¥3,400)
- 時間: 初期設定 約 90 分。以降の朝の確認作業は編集部の想定で 40 分 → 10 分
- 必要な権限: Shopify のカスタムアプリで
read_ordersとread_productsの 2 スコープ - 注意: Shopify の注文取得は「更新分だけ」に絞らないと、シートが重複行だらけになる
編集長 Mira の見解
Shopify の分析画面は優秀ですが、「自社の言葉で作った集計表」の代わりにはなりません。仕入れロットや原価、実店舗の在庫と並べて見たいとき、経営者が最後に開くのは結局スプレッドシートです。n8n を使う価値は、この「Shopify から自社の表への転記」を人の手から外せる点にあります。同種の自動化は Zapier 版のレシピ でも組めますが、n8n は課金単位がワークフロー 1 回の実行なので、注文件数が伸びても費用が跳ねにくいのが構造的な強みです。まずは 1 店舗 1 シートで始め、動くことを確認してから項目を増やしてください。
このレシピで解決する課題
小規模なネットショップでは、受注管理と在庫確認が経営者本人の朝のルーティンになりがちです。編集部が想定する典型的な困りごとは次の 4 つです。
- 手作業の転記: Shopify の注文一覧を見ながら、自社の管理表に商品名と数量を打ち直している
- 在庫の把握遅れ: 「気付いたら人気商品が品切れ」を月に数回やってしまう
- 月末のまとめ作業: 月次の商品別売上を出すのに、CSV を書き出して手で集計している
- 属人化: その集計表を作れるのが経営者 1 人だけで、休むと止まる
このうち 1・3・4 は転記の自動化でほぼ解消できます。2 も「毎朝決まった形で数字が出てくる」状態にすれば、発注判断のタイミングを前倒しできます。次のセクションで、全体の流れを図で確認します。
自動化の全体フロー
スケジュール実行なので、Shopify 側のプランや外部アプリ追加は不要です。
ポイントは 03 の「明細に分解」です。Shopify の注文 1 件には複数商品が入るため、注文単位のままシートに落とすと商品別の集計ができません。次のセクションで、この構成にかかる費用を整理します。
費用の比較 — n8n Cloud とセルフホスト
n8n は 公式サイト によればドイツの n8n GmbH が開発する業務自動化ツールで、GitHub 上のソースコード を自分のサーバーで動かすセルフホスト版は無料で使えます。公式料金ページ に掲載されているクラウド版の価格は下表のとおりです。
| 使い方 | 月額 (公式表記) | 編集部換算 (€1 = ¥170) | 実行回数の上限 | 編集部の評価 |
|---|---|---|---|---|
| セルフホスト (Community 版) | 無料 | サーバー代のみ | 制限なし | ◎ サーバーを触れる人がいるなら最有力 |
| n8n Cloud Starter | €20 / 月 (年払い) | 約 ¥3,400 | 月 2,500 回 | ○ 1 日 1 回実行なら十分すぎる余裕 |
| n8n Cloud Pro | €50 / 月 (年払い) | 約 ¥8,500 | 月 10,000 回 | △ 複数店舗・多数の自動化を回す段階から |
ここで効いてくるのが n8n の課金の考え方です。公式ドキュメントの説明では、実行 (execution) はワークフロー全体を 1 回動かした単位であり、途中のステップ数や処理したデータ量では変わりません。つまり「毎朝 1 回、注文 200 件をまとめて処理する」構成なら、注文が 200 件でも 500 件でも消費は 1 回です。
💡 編集部のコスト設計ヒント
1 日 1 回の定時実行なら月 30 回程度。Starter プランの月 2,500 回に対して 1% 少々しか使いません。逆に言えば、同じプランのまま「請求書の発行」「レビュー依頼メール」など他の自動化を 10 本以上追加しても収まる余地があります。最初の 1 本を Starter で始め、増えてきたらセルフホストへ移す判断が現実的です。
セルフホストを選ぶ場合はサーバー代が別途かかります。Hetzner Cloud のような海外の格安クラウドサーバー、または国内のサーバー提供会社の仮想サーバーを使うのが一般的で、月額の目安は ¥700〜¥1,500 程度です。導入手順は n8n のセルフホスト構築レシピ に詳しくまとめています。
なお Shopify 側は既存プランのままで構いません。Shopify 公式の日本語料金ページ によると、ベーシックプランが月払い ¥4,850 / 月 (年払い ¥3,650 / 月)、グロープランが月払い ¥13,500 / 月 (年払い ¥10,100 / 月) です。今回の構成でプラン変更は不要です。
費用感が掴めたところで、着手前に揃えておくものを確認します。
準備するもの
着手前に、下表の 4 つを手元に揃えてください。所要時間は編集部が実際の設定手順を分解して見積もった目安です。
| 準備するもの | 費用 | 所要時間 | 補足 |
|---|---|---|---|
| Shopify のカスタムアプリとアクセストークン | ¥0 | 約 15 分 | 管理画面から自分で発行できます |
| Google アカウントと空のスプレッドシート | ¥0 | 約 10 分 | 個人の Gmail アカウントでも可 |
| n8n の環境 (Cloud またはセルフホスト) | ¥0〜¥3,400 / 月 | 約 20 分 | Cloud なら登録するだけ |
| Google Cloud のプロジェクトと認証情報 | ¥0 | 約 30 分 | Sheets API を有効化して認証情報を作成 |
Shopify の認証方式は 3 種類ありますが、n8n 公式の認証ドキュメント では 1 店舗運用の場合はアクセストークン方式が推奨されています。必要な入力は「ショップのサブドメイン」「アクセストークン」「アプリのシークレットキー」の 3 つです。
⚠️ 権限スコープの落とし穴
同ドキュメントには、スコープに依存関係がある旨が明記されています。注文を読む read_orders を有効にする場合、商品を読む read_products も併せて必要です。片方だけ有効にして「注文は取れるのに商品名が空」という状態でつまずく例が多いので、カスタムアプリ作成時に 2 つセットで有効化してください。
準備が揃ったら、いよいよ設定に入ります。
設定手順 — 90 分の内訳
read_orders と read_products を有効化し、インストール後に表示されるアクセストークンを控えてください。トークンは再表示できないため、この時点で安全な場所に保存します。所要時間は編集部が手順を分解して見積もった目安です。
Shopify ノードで使える操作は 公式ドキュメント に一覧があり、注文については作成・削除・取得・一括取得・更新が、商品についても同様の 5 操作が用意されています。今回使うのは注文の一括取得だけです。
なお n8n のノード設定欄では、前のノードの値を差し込むために二重波括弧の式 ({{ $json.フィールド名 }} のような書き方) を使います。ステップ間で値を渡す箇所はこの記法になる、と覚えておいてください。
ワークフローが動いたら、次は受け皿となるシートの作り方です。
集計シートの設計
シートは 2 タブ構成にすると運用が楽になります。編集部が推奨する列構成は次のとおりです。
| タブ | 列 | 役割 |
|---|---|---|
| 明細 | 注文日 / 注文番号 / 商品名 / SKU / 数量 / 単価 / 小計 | n8n が追記する生データ。人は触らない |
| サマリー | 商品名 / SKU / 当日数量 / 当日金額 / 直近 7 日数量 / 在庫残 | 関数で明細から集計。朝はここだけ見る |
「明細タブは機械が書く、サマリータブは関数が読む」と役割を分けるのが要点です。人が明細タブに手入力すると、次の自動追記で行がずれて集計が壊れます。在庫残の列だけは仕入れ時に手で更新するか、別途 Shopify の在庫データを取り込む拡張が必要です。
⚠️ よくある失敗: 重複行の山
最も多い失敗は、取得条件を絞らずに「全注文を取得」して毎日追記してしまうケースです。3 日目には同じ注文が 3 行並び、集計金額が 3 倍になります。Shopify ノードの取得条件で作成日の範囲を前日 1 日分に限定し、テスト段階では必ず 2 日連続で実行して行数が想定どおりに増えるかを確認してください。
もう 1 つ、規模が大きくなったときに効いてくる制限があります。Google Sheets API の公式クォータ では、書き込みリクエストがプロジェクトあたり毎分 300 回、ユーザーあたり毎分 60 回に制限されており、超えると 429 エラーが返ります。1 行ずつ書き込む設計だと、1 日 100 件を超えるショップでは上限に触れる可能性があります。その場合は明細をまとめて一括追記する設定に変更してください。
Shopify 側にも API のレート制限 がありますが、1 日 1 回のまとめ取得であれば通常の運用で問題になることはまずありません。次に、費用面で使える制度を確認します。
補助金は使えるか
💡 IT 導入補助金という選択肢
n8n や Shopify の月額そのものは補助対象になりにくいものの、EC サイトの構築や受発注システムの導入と組み合わせた申請では対象になる可能性があります。制度の枠組みと申請準備の進め方は IT 導入補助金 2026 の記事 にまとめています。年商規模が小さい個人事業主なら 小規模事業者持続化補助金 のほうが使い勝手が良い場合もあります。いずれも申請が通ること (採択) は保証されないため、補助金ありきの計画は避けてください。
投資対効果 (ROI) の観点では、そもそも n8n Cloud Starter で月 ¥3,400 程度、セルフホストなら月 ¥1,000 前後です。編集部の想定で朝の確認作業が 1 日 30 分短縮されると、月 10 時間強の削減になります。補助金を待つより、まず動かしてしまうほうが早いという判断も十分に成り立ちます。
最後に、編集部に届くことの多い疑問をまとめておきます。
よくある質問
Q. Zapier や Make とどちらが良いですか。 A. 設定の手軽さでは Zapier や Make が上です。一方 n8n は課金単位がワークフロー 1 回の実行なので、注文件数が増えても費用が上がりにくいという違いがあります。まず動くものが欲しいなら Zapier での在庫アラート構成 から入り、費用が気になり始めたら n8n に移行する順序が現実的です。
Q. 複数店舗を運営しています。 A. Shopify の認証情報を店舗ごとに登録し、同じワークフローを複製して書き込み先タブを分ける方法が簡単です。データベース的に管理したい場合は n8n + Airtable の構成 のほうが向いています。
Q. 注文が入った瞬間に通知が欲しいです。 A. このレシピは日次のまとめ集計に特化しています。即時通知が目的なら、Shopify から LINE へ通知する構成 のように、リアルタイム通知を別のワークフローとして用意するのが素直です。
Q. プログラミングの知識は必要ですか。 A. 明細を商品行に展開する Code ノードだけ、数行のコードを扱います。それ以外は画面上の設定で完結します。コードに抵抗がある場合は、注文単位のまま記録して集計の粒度を落とす構成でも運用は可能です。
出典・参考情報
- n8n 公式 料金ページ (Cloud プラン価格、実行回数、実行の定義)
- n8n 公式ドキュメント Shopify ノード (対応する操作一覧)
- n8n 公式ドキュメント Shopify 認証情報 (認証方式とスコープの依存関係)
- Shopify 公式 日本語料金ページ (各プランの月額)
- Google Sheets API 使用量の上限 (毎分の読み書きクォータ)
- Shopify 公式 API レート制限
※ 本記事の日本円換算は €1 = ¥170 の概算で、2026 年 7 月時点の目安です。実際の請求額は為替と各社の改定により変動します。料金は必ず公式ページで最新の値をご確認ください。
Mira / AI経営ラボ 編集長
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